「もちろん抗議をしたりはしますけど、自然な振る舞いで勝つということを常に意識しています。だから試合中に自分はあんまりそういうもの（怒りや落胆など感情の起伏）を出さないタイプだと思います。（グランドスラム大会は）メディアが沢山いたりして、それだけの責任感もありますし、下手なことはできないっていう気持ちもある。そういった意味では決勝戦に限らず、1回戦から常に見られていると思いながら試合していますし、そこは凄く意識していましたね」

　そういう自分自身の振る舞いへの自覚が、結果的にはスポーツマン（パーソン）シップにつながっていくということだ。

　この問題で最終的に加藤は賞金とポイントを没収されたが、気持ちを切り換えて臨んだ混合ダブルスではティム・プッツ選手と組んで見事に優勝を飾り、トラブルとなった女子ダブルスの相手ペアへの真摯な発言もまた話題となった。そこに加藤の自分自身の振る舞いに対して持つ責任感が表れており「尊敬」と「勇気」と「覚悟」という彼女のスポーツマン（パーソン）シップが見えてくる。

「加藤選手は結果で取り返してくれた。さすがだと」

　そんな加藤の姿に小田もこう賛辞を送る。

「その時は加藤選手に凄く批判が集まってしまうんじゃないかと思ったんですけど、むしろ相手の選手に対する批判などもあり少しホッとした部分はありました。しかも加藤選手は、（混合ダブルス優勝という）結果で取り返してくれた。それはやっぱりさすがだと思います」

全仏オープンの混合ダブルスで優勝後、異例のスピーチを行なった加藤未唯。大会プログラムの裏に原稿がしたためられていた　©︎Getty Images

　実は同じようにスポーツマン（パーソン）シップの本質は自分自身の中にあると語っていたのは、グランプリを受賞した小平さんだった。

　昨年に現役引退を発表した小平さんは「将来のスポーツ界にまた新たな風を残して次のステージに行けるのかなと思っている」と受賞の喜びを語った。その上でプレーヤーの間でのスポーツマン（パーソン）シップの浸透の実感を聞くとこんな答えが返ってきた。

「それが作られたものではなくて、自分の心の中から、内面から自然と出てくることが人間らしさだと思っています」

　小平さんは続ける。

【次ページ】　「国枝選手と戦う時点で、相当高ぶるものがあった」