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プロ野球PRESSBACK NUMBER
プロ野球4年で戦力外通告、打撃投手も1年でクビ「23歳で“高卒”を痛感した…」“元阪神タイガース投手”が明かす暗黒バイト時代と逆転人生
posted2023/06/27 11:00
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Sankei Shimbun
東京・日本橋は、弁護士や税理士、会計士といったいわゆる“士業“が密集するエリアだ。その中心地にあるビルの一室を訪れると、そこには名だたるオリンピアンやW杯出場選手、MLBのワールドシリーズ制覇のユニホームが華々しく飾られていた。
元プロ野球選手としては初の公認会計士である奥村武博(43歳)が所属する事務所である。現在は一流アスリートたちをクライアントに持ち、公認会計士としてアスリートの確定申告やスポーツクラブの財政面を支える傍ら、社団法人としてセカンドキャリアの支援を行う代表も兼任している。
「一軍登板ゼロ。わずか4年で戦力外通告を受けた、という経歴が意外とこの職種では共感を受けるんですよ」
実に9年もの歳月の末に難関試験を突破した男は、冗談交じりに笑みを浮かべた。
同期はメジャーリーガー、甲子園優勝監督
190センチ近い体躯に、手足の長い体型はすぐに元アスリートだったことを想起させる。それでも1997年、阪神タイガースにドラフト6位で入団した奥村の選手時代を覚えている人はよほどの“トラキチ“でもそう多くないはずだ。
この年は井川慶や坪井智哉、現在は智弁和歌山で指揮を執る中谷仁らが入団した空前の当たり年でもあった。他球団を見渡しても高橋由伸、川上憲伸、井端弘和ら球史に名を連ねる名手が揃っていた。だが華々しい同期たちのように、奥村は野球界では輝くことはついぞならなかった。
「プロでの挫折を経験したからこそ、公認会計士になれたんだと思います。そんなキャリアだからこそ、ビジネスの世界ではちょっと面白いとみてもらえることも多々ありました。ある意味役得ですよ(笑)」