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「みんなに悪い…1回飛び降りよう」 超人気アイドルレスラーが抱えた“心の闇”…ライオネス飛鳥が語るクラッシュ・ギャルズ“最初で最後の大ゲンカ”
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)AFLO、R)Hideki Sugiyama
posted2023/06/29 17:00
クラッシュ・ギャルズとして一世を風靡したライオネス飛鳥。人気の裏では、大きな葛藤を抱えていたという
「みんなに悪いな…1回飛び降りよう」
――自傷行為におよんだり、「もう消えてしまいたい」という最悪な事態を考えたことはありますか。
飛鳥 みんなに対して悪いなっていう気持ちもあるんだけど、右にも左にも前にも後ろにも行けない状態になったから、1回飛び降りようと思ったの。
――えっ……!?
飛鳥 これはマジ。実際にビルに上がるとかのアクションを起こさなかったけど、そこまで追い詰められていた。
――踏みとどまることができた理由は。
飛鳥 やっぱり自分はクラッシュ・ギャルズだから、飛び降りてしまったらすべてが崩壊してしまう。親のことも考えたし、いろんな人に迷惑をかけてしまうなっていうことで立ちどまって、じゃあどうするかという選択が、芸能活動を辞めるということだった。ほんっとに大人げないんだけど、誰にも相談せず、試合が終わったあとに、勝手にマスコミに言っちゃった(86年5月13日、横浜文化体育館)。黒髪ストレートにして、リングコスチュームも黒一色にしていた、あの時期。
「あの黒はね、心のなかそのものだった」
――本来のイメージカラーは青色でしたが、真っ黒にイメチェンして。
飛鳥 あの黒はね、心のなかそのものだった。
――闇の時期を脱するきっかけはなんだったんでしょう。
飛鳥 その友達が言ってた言葉に疑問を抱くようになって、それまでずっとしゃべってなかったジャガーさんに、久しぶりに電話をしたの。「すぐ出てきなさい」って言われて、その日はジャガーさんの実家に泊まらせてもらって。今まで言葉にできなかった全部を聞いてもらって、それでリセットできた。ジャガーさんは何も言わず、ただ聞いてくれただけ。
――否定も肯定もされなかったことで、ようやく心のモヤが晴れたと。
飛鳥 晴れたね。ウォークマンをはずして、黒色も着なくなった。そういう変化を見せたとき、仲間たちが何も言わずに受けいれてくれたの。ほんっとに、誰も何も言わないんだよ! 会長も、千種も。それはもう感謝しかないよね。
気がついた「自分って思っているより1人じゃない」
――ストレス障害に悩んでいる学生や社会人、有名人やアスリートは多いと思います。経験者として、今がんばっている人たちにかけられる言葉があるとするならば。
飛鳥 んー、いろんな例があるだろうから、その人に当てはまるかわからないけど、1人で抱えこまないで、人に話したほうがいいとは思う。大きく深呼吸をして、周りを見渡して。そうすると、大勢の人が自分を求めてくれてることがわかるかもしれないし、あとは、自分って思っているより1人じゃないよ。あのとき私は誰も信じられなかったけど、戻ってきたときには誰も何も言わず、受けいれてくれたということは、みんなが心配してくれてたということ。言葉に出さずとも、「おかえり」っていう気持ちで迎えてくれた。だからね、自分が思ってるより1人じゃないから。
――今、あのころの自分にかける言葉があるとするなら?
飛鳥 バカヤローですね。でも、結果論かもしれないけど、ライオネス飛鳥、北村智子(本名)という人間にとっては、ああいう時期も重要だったんじゃないかなって思うし、あれがなければライオネス飛鳥は構築されなかった。ということは、のちにわかっていくんだけど……。
《#2につづく》
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。