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「みんなに悪い…1回飛び降りよう」 超人気アイドルレスラーが抱えた“心の闇”…ライオネス飛鳥が語るクラッシュ・ギャルズ“最初で最後の大ゲンカ”
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)AFLO、R)Hideki Sugiyama
posted2023/06/29 17:00
クラッシュ・ギャルズとして一世を風靡したライオネス飛鳥。人気の裏では、大きな葛藤を抱えていたという
当時の思考「なんでプロレスラーが歌うの?」
――クラッシュ人気の真っただ中にあった86年、ついに心が病んでしまった。当時、22歳。何があったんですか?
飛鳥 仲良くしてた友達から「なんでプロレスラーが歌うの?」と、そういう問いかけをされたんだよね。それまでは人前で歌う経験を楽しんでたけど、毎日があまりにも忙しすぎて。あのころはアイドル番組がいっぱいあったし、1日にリング上以外でも何度も同じ歌を歌うという毎日のなかで、そのひとことで「え……」って立ちどまっちゃった。さらに、先輩たちがいなくなることを突き詰めて考えちゃった。性格も出たのかなぁ。
――依存心も芽生えましたか。
飛鳥 んー、自分を見失っちゃった。クラッシュ・ギャルズの1人であり、団体の屋台骨であるという意識がなかったのかも。プロレスの世界に入る前って、ビューティ・ペアみたいになりたい、ジャッキーさんみたいになりたい、赤いベルト(WWWA世界シングル王座)を絶対に獲るっていうのが大きな軸としてあったけど、そこにたどり着く前に、目の前で起こっている現状に疑問が湧いてしまった。
長与千種との“最初で最後の大ゲンカ”
――どういう行動を起こしましたか。
飛鳥 人と話せなくなっちゃった。団体行動をしないといけないにもかかわらず、個人行動になって、全女のなかで孤立してしまった。たとえば、音楽が流れてないのにウォークマンのヘッドフォンをずっとしてる、とかね。音楽がかかってないことをみんなは知ってるんだよ、音が漏れてないから(笑)。それぐらい、話しかけないでオーラがすごかった。
――実際に、話しかけてくる選手は?
飛鳥 いない。でも、千種だけは言ってくれたんだよね。それで大ゲンカしたの。大ゲンカは、後にも先にもその1回だけ。「おまえ、それでいいのかよ!」っていう言葉を投げかけてくれたんだけど、それさえ聞きいれない自分がいた。たぶんね、千種も覚えてると思うよ。なんてことはない、地方の試合会場だったな。根底にあるのはね、心配なんだよ。今ならわかる。あのころの私たちは、2人で1つだったから。
――全女のスタッフたちも、腫れ物にはふれない感じでしたか。
飛鳥 1度ね、コンサートのリハーサルに遅刻したことがあった。で、社長室に呼ばれたの。(故・松永高司)会長とジャガーさんがいて、まずジャガーさんにひっぱたかれた。そうすると、会長は怒れないわけ。
――ジャガー選手の戦術ですね。
飛鳥 かもしれないね。