選手は皆、データに目を通しています。どこまでそれを役立てたのかは選手によって異なるかもしれませんが、特にバッテリーはしっかり見ていましたね。ダルビッシュ投手も、藤川球児投手もみんなじっくり観ていました。

　ただ、当時はトラックマンなどの計測機器はないので、球種、コースなどやクイックモーションのタイムなどのデータが中心でした。相手チームの投手が交代すると、選手はベンチでその都度、我々が作ったデータを見ていました。

　データ活用の仕方は選手によってさまざまでしたが、データなしで対戦したら絶対に投手が有利なので、どんな打者でもある程度は必ず見ます。投手の癖などに関しては“僕はいいです”という選手もいましたが。とにかく何を投げてくるかわからないと対応できないですからね〉

©Naoya Sanuki

宿敵・韓国を徹底分析して見えたこと

　2009年の大会では、主たるライバル国はMLB選手のいる国ではなく、アジアの宿敵・韓国だった。

〈韓国は本当に強かった。打者でいえば金泰均（のちロッテ）、李大浩（のちオリックス、ソフトバンク）、投手では左腕の金廣鉉ですね。金廣鉉は、前年の北京五輪では予選と準決勝で2回、日本相手に好投して、韓国を金メダルに導いている。だから、リベンジしようと必死でデータを集めました〉

　3月7日の第1ラウンドA組の試合で金廣鉉は、日本相手に先発したが、2回途中7被安打自責点8で降板。予想外のコールドゲームで日本が勝利を収めた。

　このリベンジには三井チーフスコアラーの元、データ班が金廣鉉のデータを徹底的に収集して、日本チームに提供していたことも寄与したのだろう。

〈僕たちのデータも役に立ったのではないでしょうか？　金廣鉉は若いうちにMLBに挑戦していたらタイトルを取ったかもしれないレベルのポテンシャルを持った投手です。スライダーがすごい切れるので、普通ならまず打てなかったし、まっすぐも走っていた。でも、MLBに挑戦したのは力が落ちた2020年になってからでした。惜しいなと思いました。

　そして、金廣鉉は2023年のWBCでも1次ラウンドの日本戦で先発しました。2009年は最年少だったのが、14年後は最年長です。ちょっと驚きましたね〉

金廣鉉を吉田正尚ら侍打線が再び打ち砕いた　©Naoya Sanuki

韓国戦の分析に集中した結果、世界一に

　なお2023年のWBC日本戦では、金廣鉉は3回途中3被安打自責点4で敗戦投手になっている。最近になって、金廣鉉ら韓国代表の投手3人はWBC期間中に飲酒していたとして韓国プロ野球＝KBOから謹慎処分になっている。しかし第2回大会では、予想外に苦戦した投手もいた。

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