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「大竹のこと、心配してたんです」勉強も野球も“超エリートだった”大竹耕太郎の挫折…高校時代の恩師・同級生が語る“阪神で覚醒”の本音
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/21 11:04
大竹耕太郎27歳。ソフトバンク「苦悩の5年間」を経て、阪神移籍後になぜ覚醒したのか?
「年末に済々黌のOBが集まるイベントがあるんです。大竹も毎年必ず顔を出してくれるんですが、そこでよく『ストレートを速くしなきゃ……』と話していました。あの大竹でもプロの世界は厳しいのか。そう思った時期もありましたね」
同級生の述懐「芯の強い性格が足を引っ張ってるのでは…」
大竹と中・高時代の同級生で野球部仲間だった林竜也も、昨年末の12月9日に阪神移籍を知った。池田と同じように「これでよかったんだ」と安どした。
「プロ3年目から急に出番が減って、二軍で好投しても一軍に呼ばれない。プロ野球は僕には遠い世界なので実際のところは分かりませんが」
そう前置きしたうえで林は言葉を継いだ。
「大竹は中学でも高校でも下級生から試合に出ていて上手かったので、上級生から目をつけられていました。それでも屈しない、自分の芯を押し通す強さがあった。ただひょっとすると、その性格がプロの世界で足を引っ張って監督やコーチと上手く嚙み合っていないのでは……。そんな想像をしていました。大竹とは連絡も取り合うし、オフには毎年必ず会う。だけどプロ野球の世界を知らない僕が口を挟むことではないですし、大竹もそんな話はしない。だから、熊本からただただ大竹のことを心配することしかできず……」
環境が変われば、と考えていた林は「あの大竹ならまだまだやれる」と信じて疑わなかった。
「阪神に移ったら1年目から6つは勝てるはず。そう思っていたら、もう勝っちゃいましたね」
林の声がパッと明るくなる。取材で熊本を訪れたのは6月8日。偶然にも、その日発表された5月度の月間MVPを大竹が受賞した日だった。
「虎テレにも入りましたから」
恩師の池田は、甲子園を舞台に快投を続ける姿がたまらなく嬉しいのだという。
「“我がマウンド”という感じで気持ちよさそうに投げてますよね。活躍しだしたのは、投げる球種が変わったのも大きいのかな。高校時代からストレートは100点に近かったのですが、スライダーの評価は低いんです。ソフトバンクでも打たれるシーンを見るとスライダーなど緩いボールが多い印象でしたが、阪神に行ってカット系の割合が増えた。
ソフトバンク時代より、今の方が彼の投げる試合を見ているかもしれないです。『虎テレ』(阪神の公式動画配信サービス)にも入りましたから。プロ野球なので相手もかなり研究してくると思うので大変だと思いますが、15勝は期待したいですね」