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「僕は井上くんのパンチのヤバさを味わっている」“井上尚弥を最も苦しめた男”が予想する、井上vsフルトン「正直フルトンのコワさって感じません」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/06/16 17:02
昨年12月13日に無敵の強さで4団体王座統一に成功した井上尚弥(30歳)。スーパーバンタム級へ階級を上げ、フルトンとのタイトルマッチ(7月25日)に臨む
いくつかネットの記事を読みましたが、複数のメディアがフルトン有利とか、井上くん相手にKO勝ちするんじゃないか、などと予想していますね。それって、井上くんが階級を上げ、スーパーバンタムでまだ試合をしたことが無いからじゃないでしょうか。
フルトンにしてみれば、嚙み合わない試合になるでしょう。相手の出方を窺う序盤は五分だとしても、井上くんが流れを手繰り寄せてKO勝ちすると思います。彼のボクシングは非常に理詰めであると同時に、爆発力も秘めています。流れを作りながら倒すタイミングを測り、ドンピシャで正確なパンチを当てる。技術があるからこそできる理詰めのボクシングなんです。
フルトンはディフェンス力がありそうですが、井上くんの攻撃を捌くのは簡単じゃないですよ。きっと、井上くんが圧勝するでしょう。“スーパーバンタム級2冠王者”ということで、イメージが独り歩きしているんじゃないかな。自分は、完全に井上くん有利という印象です。
減量から解放された井上くんのパワーは増すと思います。自分は、普段の井上くんの体重が62~64kgと聞いています。バンタム級リミットの53.52kgに落とすのは相当大変だったでしょう。55.34kgのスーパーバンタム級なら動きやすいでしょうし、メンタル的にも楽に感じるんじゃないかな。確かにバンタム級より相手が大きく、重くなるわけですが、井上くんのパフォーマンスは減量苦から解放されることで、より良くなると思います。フレーム的にもスーパーバンタムでは問題ないでしょう。
4階級を制した名チャンピオンであるロマゴン(ローマン・ゴンザレス)は、ミニマム、ライトフライ、フライと、盤石の強さで駆け上がっていきましたよね。でも、スーパーフライ級では壁に当たりました。誰もが階級をアップする時に、どこかで難しさを味わう訳です。自分は、井上くんの壁はスーパーバンタムじゃないと見ています。本当の勝負はフェザー級以降じゃないですかね」
「僕は井上くんのパンチの怖さを味わっています」
続いてフルトンvsダニエル・ローマン戦を観た田口は、改めてWBC/WBOスーパーバンタム級王者の防御テクニックを褒めた。ローマンも元WBA/IBF同級チャンプであり、2年4カ月ぶりの王座返り咲きを狙っていたが、試合は終始フルトンのペースで運んだ。フルトンはローマンのインファイトを許さず、ジャブ、バックステップ、クリンチで自分の距離を保った。その結果、120-108、120-108、119-109のスコアで2本のベルトを守った。
「フィゲロア戦よりもローマン戦の方が、フルトンのパフォーマンスは良かったですね。フィゲロアが強かったから、フルトンは下がらざるを得なかったのかな……。ローマン戦のフルトンは、相手の良さを消すのが上手いと思いました。ディフェンス力があるからこそ、無敗であるように感じます。ローマン戦ではいいジャブを見せましたが、左の刺し合いでも井上くんが勝つでしょう。あの左も本当に鋭いですから。スピードにも差があるように見えます。フルトンは接近戦でのクリンチが多いですが、井上くんを相手にそれをやっても、圧に負けるでしょうね。