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大谷翔平は「1種類ですよ」と笑っていたが…エンゼルスのブルペンで目撃した“4つのスライダー”とは?「一球一球、データを解析しながら…」
posted2023/05/18 11:01
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
USA TODAY Sports/Reuters/AFLO
記憶に新しいWBC決勝。マウンドに上がった大谷翔平がマイク・トラウトに投じたラストボールは“43cmも横に動く”スライダーだった。100マイルのストレートではなく、磨き上げてきた“最大の武器”で、盟友トラウトを空振り三振に射止めた。
大谷が投じるスライダーは、海の向こうMLBで「スイーパー」と呼ばれている。全米の記者たちは「スイーパー」についての特集記事を書こうと、いつも大谷を囲んでいる。
筆者が現地取材した5月9日のヒューストン・アストロズ戦。この日、先発のマウンドに上がった大谷が投じた球種のうち、全体の4割がスライダーだった。昨シーズンよりもその割合は増加傾向にある。
日本ハムを日本一に導いた2016年の資料を開いてみると、スライダーは2割程度。ストレートが5割強、フォークが2割、時折投じるカーブが1割弱というアナリスティックが記されていた。日本にいた頃の大谷のウィニングショットは最速164km/hを誇るストレートで、スライダーを投じる割合は当時と比較しても倍に増えている。
中村悠平「ホップするスライダー」
WBC決勝で初めてバッテリーを組んだ捕手・中村悠平(ヤクルト)は、大谷のスライダーをミットに収めたあと、こんな驚きを語っている。
「曲がってからが速くなる感じのスライダーを投げる投手は過去にもいました。でも大谷君のスライダーを受けた時、曲がってから速くなるだけではなく、曲がってから落ちていくというよりは曲がってからホップするように浮き上がるような感覚の軌道でした」
ヤクルトをリーグ連覇に導いた百戦練磨の捕手でも、初めて体感するボールだった。それは大谷が世界と渡りあうために磨き続けてきた球種でもある。