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大阪桐蔭2023年春バージョンは「手堅く」強い…2年前のリベンジを許さない“必然のしぶとさ”と「強気の」大エース前田悠伍の修正力

posted2023/03/31 06:01

 
大阪桐蔭2023年春バージョンは「手堅く」強い…2年前のリベンジを許さない“必然のしぶとさ”と「強気の」大エース前田悠伍の修正力<Number Web> photograph by JIJI PRESS

東海大菅生戦、ソロ本塁打を放ち、喜ぶ佐藤夢樹。豪快な打撃に注目しがちだが、大阪桐蔭の強さの土台には手堅さを感じる

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間淳

間淳Jun Aida

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 降水確率0%の天気予報通り、甲子園には青空が広がっていた。スコアボードに表示された校名は、あの時と同じ。先攻に東海大菅生、後攻に大阪桐蔭の名前が表示された。ただ、天気は対照的だった。

2年前に刻まれた「泥だらけになった先輩たちの姿」

 両校が甲子園で対決するのは、2021年の夏以来。あの日の降水確率は90%。前夜から雨が降ったり止んだりを繰り返し、午前8時にプレーボールが告げられた聖地のグラウンドは試合前から水を含んでいた。

 試合序盤から降り始めた雨は中盤に入る頃、強さを増していった。ぬかるんだグラウンドには所々、小さな水たまりができた。バッターボックスの白いラインは泥で見えなくなっていた。

 そして、8回。東海大菅生の本田峻也選手が放った三遊間への打球が泥で勢いを失い、大阪桐蔭のショート藤原夏暉選手の目の前で止まると、審判が試合を止めた。32分間の中断を経ても雨の勢いは収まらず、降雨コールドで大阪桐蔭が勝利した。継続試合がルール化されるきっかけとなる一戦だった。

 この試合をスタンドで見ていたのが、今の3年生だった。2番で先発出場した山田太成選手も、その1人だ。「泥だらけになってプレーする先輩たちの姿を覚えています」。当時の記憶が、はっきりと刻まれている。

 因縁の対決。百戦錬磨の西谷浩一監督も東海大菅生への警戒を強めていた。宿舎で選手を集めて、こう伝えていた。

「相手は2年前の気持ちをぶつけてくる」

 前日の能代松陽戦に勝利したものの、チームは消極的な打撃でわずか2安打に終わっていた。得点はスリーバントスクイズの1点のみだった。「攻める気持ちを持たなければ負ける。受け身になってはいけない」。連戦の甲子園で下を向いている時間はない。西谷監督によるミーティング、さらに選手間のミーティングで攻める意識を共有した。

積極打法、相手守備を見極めた絶妙なバント

 気持ちはプレーに表れていた。各打者はファーストストライクから積極的にバットを振り、東海大菅生の投手陣に圧力をかけた。

 3回、大阪桐蔭は先制のチャンスをつくる。先頭の1番・小川大地選手が四球を選ぶと、2番・山田選手はサード前にバント。勢いを殺した打球は東海大菅生のサードが捕って一塁へ送球しても間に合わず内野安打となった。試合の流れを大きく変えたヒット。決して偶然や運ではない。

 山田選手はこのように明かす。

【次ページ】 大阪桐蔭が日課としているバント練習

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