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侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
チェコ監督「こっぴどく激しい試合をありがとう」…WBC通訳が胸を打たれた“グッドルーザーの言葉”とは「我々は夢を持って東京にやってきた」
posted2023/03/30 17:43
text by
小島克典Katsunori Kojima
photograph by
Getty Images
前編ではWBCの成り立ちと変遷についてお話しさせていただきました。後編では、各国の監督・選手の言葉を訳してきた当事者として、彼らの野球への情熱や、リスペクトあふれる発言を紹介していきたいと思います。
元中日の「ディンゴ」が語った古巣愛
今大会を振り返ったとき、最初に思い浮かんだのはいつも陽気なオーストラリア代表とデーブ・ニルソン監督です。オーストラリアは5大会連続でWBCに出場している常連国ですが、過去4大会はすべて1次ラウンド敗退。そんな彼らは今大会、1次ラウンドで3勝を挙げ、5度目の挑戦にしてはじめて準々決勝進出の快挙を成し遂げました。
かつてMLBのオールスターにも選出されたニルソン監督は、これまで30人以上のメジャーリーガーを輩出しているオーストラリア球界最大のヒーロー。2000年に「ディンゴ」という登録名で、中日ドラゴンズでプレーしたことを記憶している方も多いでしょう。
東京ラウンドの開幕戦で、ディンゴ率いるオーストラリアは、直近8連敗を喫していた難敵・韓国を8対7で退け、歓喜の雄叫びを上げました。試合前、中日時代の同僚イ・ジョンボムの息子で、韓国の若きスター選手イ・ジョンフについて聞かれたディンゴは、「互いに母国を離れてプレーしていた当時の仲間の息子と、WBCの大舞台で戦えるなんて、こんなスペシャルなことはない。野球は人と人をつなげる素晴らしい競技だ」と感慨深そうに答えました。
準々決勝のキューバ戦に3対4で惜敗した直後の会見でも、ディンゴは印象的な言葉を残しています。9回の攻撃を三者凡退で抑えられたキューバのクローザー、現中日のライデル・マルティネスを「中日は素晴らしい投手を持っている。うちのチームにも欲しいくらいだよ」と称賛。スマートに勝者を称えつつ、古巣へのリスペクトも示す。「キャンプ地の府中市からマイアミへ」という夢は惜しくも叶いませんでしたが、オーストラリア代表は紛れもないグッドルーザーでした。