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野村克也の逝去から2年後、“生前の肉声データ”が届いて…楽天・元番記者が明かす“監督退任時の後悔”「東北に来て、幸せだったのか」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2023/02/10 11:00
野村克也は楽天監督1年目のシーズン開幕前に、1時間のインタビューに応じてくれた。写真はその時の様子
野村は楽天で何を残したのか?
09年、日本シリーズ進出を懸けCS第2ステージに進出した楽天は、1勝4敗で日本ハムに敗れシーズンを終えた。ユニフォームを脱ぐ野村は、両チームの選手から胴上げされ最高の花道を飾った――そんな表現もできるだろうが、金野は敗軍の将を手放しでねぎらうことができなかった。
野村の監督退任と同時に楽天担当の務めを終えた金野に、悔恨がつきまとう。
12年に東日本大震災の復興支援ソングとしてリリースされた『花は咲く』で、野村が担当したパート<私は何を残しただろう>のフレーズに「そこをノムさんに歌わせるか?」と勝手に訝しがる。13年に球団初の日本一となり、眩いばかりのカクテル光線に照らされながら監督として胴上げされる星野仙一に、どこか野村を投影している自分がいた。
そんな時に、金野の脳裏には決まってこんな疑問が去来していたのだという。
「ノムさんは楽天で何を残したんだろう? 東北に来て、幸せだったのかな?」
この答えを求めたのが、河北新報での連載であり、今回の著書だった。同時にこれらは、金野から野村への懺悔、贖罪でもあった。
筆を執って、わかったこと。それは、野村が残したのは人であることだ。チーム、メディア、ファン。人と人との間を繋いだ。だから、東北の人々はきっとノムさんに感謝する。
あれから13年。記者としての金野の心は、軽くなった。今こそ、本書を通じて読者へ真っ直ぐに、言霊を投げかけることができる。
ノムさんは東北に来て幸せだったと思いますか? みなさんは幸せでしたか?
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。