Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

「今だから言えますけど…」モンスター井上尚弥29歳が告白する“減量のキツさ”「12月のバトラー戦、前ももがつりそうだった」 

text by

渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/01/15 17:02

「今だから言えますけど…」モンスター井上尚弥29歳が告白する“減量のキツさ”「12月のバトラー戦、前ももがつりそうだった」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

1階級上のスーパーバンタム級転向を正式表明した井上尚弥。Number最新号で独占インタビューに応じた

「1.8kg増えることによって、リングでの自分の安定感は増すと思うんですよ。たとえばこの前のバトラー戦、本当は最初の攻撃をして、さらに2段階、3段階の攻撃をしたかった。見ている人も分かったと思うんですけど、あの試合は1回のアタックで終わってるんです。今だから言えますけど、前ももがつりそうな違和感があって、追撃することができなかった。これ、たぶんスーパーバンタム級なら大丈夫なんです。自信があります。安定感というのはそういうことです」

 無理な減量がなくなれば、よりよい状態で試合に臨める可能性は高まる。弟の拓真はバンタム級を主戦場としながら、ここ何試合かをスーパーバンタム級でファイトしている。その拓真はスーパーバンタム級でのコンディション作りについて「バンタム級ほどの渇きはない。試合直前までしっかりとトレーニングできる」と兄に話している。井上が少なくとも「最後のほうはヘロヘロ」という状態から解放されるのは間違いないだろう。

 減量が年々きつくなってきたのはもちろん不摂生が原因ではない。よりレベルアップするために筋量を増やし、ていねいな体作りをしてきたからである。

「スーパーフライ級のとき、減量に入る前の普段の体重は63kgくらいでした。いまはだいたい64kg。当時に比べてナチュラルウエートは1kgしか増えてないんですけど、体つきは全然違うんです。スーパーフライ級のときの63kgはポテッとした感じでした。ちょっと脂肪がついた体つきの63kgです。それがいまは筋量がしっかりついた64kgになっています」

 スーパーバンタム級で成功するポイントは1.8kg増をどれだけ味方につけることができるかにある。今は体作りのパートナー、トレーナーの八重樫と相談しながら戦略を練っているところだ。

「八重樫さんからは、『1.8kg増えたからといって楽にはならない。その分フィジカルを上げるし、筋量も増やす』と言われています。大事なのはボクシングに必要な動きの中でどう力を出せるか。いくら重いものを持ち上げることができても、ボクシングには意味がないじゃないですか。たとえば自分、拓真、従兄弟の浩樹は一緒にトレーニングをしてるけど、それぞれボクサーとしての動きは違いますよね。動きやパンチの打ち方が違う。だから八重樫さんはそこを考慮して、ちょっとずつメニューを変えたりしてくれる。ボクシングに結びついて、初めてトレーニングが意味をなすということです」

<前編から続く>

#1から読む
「背筋も喜んでるわ」井上尚弥29歳が語る“自分の筋肉”…なぜ先輩・八重樫東にトレーニングを依頼した?「お尻がデカイとよく言われます」

関連記事

BACK 1 2
井上尚弥
ノニト・ドネア
八重樫東
アラン・ディパエン
山中慎介
ジェイミー・マクドネル

ボクシングの前後の記事

ページトップ