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「若い指導者に“無報酬の休日返上”は無理」春高バレー制覇・駿台学園に学ぶ“部活アップデート” 緻密なデータ戦術だけじゃない強さの秘密
posted2023/01/10 11:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
JIJI PRESS
東京・駿台学園が圧倒的な組織力を見せつけて春高バレーを制した。
決勝戦では世代を代表する絶対エースの舛本颯真(3年)を擁する熊本・鎮西に2セットを先取され、第3セットも10対14と一時は4点をリードされる苦しい展開だったが、そこからフルセットでの逆転劇で全国制覇を達成した。
追い込まれても諦めずに、勝負をひっくり返す。そう聞けば、勝因は「相手に負けない強い気持ち」と表されがちだが、駿台学園の場合はそれだけではない。相手に先取されても、追いついても、いかなる状況においても1つ1つのプレーに明確な意図がある。
サーブはただ思い切り打つのではなく、ビッグサーバーは得意なコースに攻め、フローターサーブは状況に応じてどの場所やターゲットをどんなサーブで狙うかを的確に示す。
ディフェンス面においては、誰がどの位置でブロックに跳び、コースはどこを開け、抜けたボールは誰が拾うかまでそれぞれの守る位置をゾーンで区分する。
オフェンスも同様で、ローテーションごとに徹底した分析からサイドアウト率やブレイク率の高さを共有し、最も効果的な攻撃を選択する。エースがフィニッシュを決めるために誰が黒子に転ずるか、相手ブロックが揃った状況では無理に勝負することなくリバウンドをもらって再び立て直す技術など、状況判断能力に長けた選手たちが“すべき役割”を遂行している。
しかも、それをスタメンの選手のみならず、代わって入った選手も同様にそれぞれの仕事を見事なまでに果たしている。
率いるのはアナリスト出身の梅川監督
高校生の中でもトップレベルの戦術と戦術遂行度を誇る駿台学園を率いるのは、VリーグのNECでアナリストを務めた経験を持つ梅川大介監督だ。試合中に持つタブレットにはアナリストを務める部員からリアルタイムでデータが送られ、その数字をもとにした選手への指示は具体的で、迷いがない。まさに“策士”。
そんな40歳の指揮官が率いる駿台学園が6年ぶりに頂点へ立つまでの道のりには、さまざまなチャレンジがあった。