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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「女子校みたいで、“青春だなぁ”って」KAIRIにとって現在のスターダムとは? 初代IWGP女子チャンピオンが語る“最後の冒険”の意味
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by新日本プロレス
posted2022/12/23 17:02
初代IWGP女子チャンピオンとなったKAIRI。試合後には中野たむが挑戦表明
たむの自伝も購入「彼女がどんな人間か知りたい」
IWGP女子王座には、中野たむが挑戦表明。1月4日、新日本プロレス恒例の東京ドーム大会で初防衛戦となる。“1.4ドーム”で女子のタイトルマッチが行なわれるのだから歴史的な出来事と言っていい。ここで女子の試合、KAIRIの試合を初めて見るというファンも多いのではないか。
そんな試合で何を重視するかと聞くと、KAIRIは「やりすぎないこと」だと答えた。彼女ならではのセンスだろう。
「やりすぎないというのは背伸びせず、力みすぎず、ありのままの自分を見せるということです。闘いに勝つことは大前提として、新日本プロレスさんの東京ドーム大会という大舞台で、どうすれば私たちの試合もお客様の印象に残るのか。もちろん激しい攻防や大技も大事ですが、感情の爆発が一番の鍵になってくると思います。だからたむちゃんが持っている感情を全部ぶつけてきてほしいですね。私はそれをすべて受け止めた上で、ぶつけ返します」
タイトルマッチは挑戦者が主役。それがKAIRIの持論だ。
「試合を通してチャレンジャーの魅力をアピールして、その上で自分が勝つ。そうしていくことでベルトの価値も高まると思います」
チャレンジャーが評価されることもチャンピオンの力量。そうした部分もプロレスにはある。そのために必要なのは、「相手としっかり向き合うこと」だ。
「だからたむちゃんとの試合が決まって、彼女がどんな人間か知りたくて自伝も買いました。彼女の人生、その背景まで見てドラマ性のある試合がしたいですね。単に強いチャンピオンじゃなく、器が大きなどっしり構えたチャンピオンになりたいです。視野の広さを持ちたいというか」
「このベルトと一緒に冒険に出る。そんな感覚」
WWEには、何人ものお手本がいた。男子ならランディ・オートンやローマン・レインズ、AJスタイルズに中邑真輔。女子でもASUKAやベッキー・リンチが「どっしり構えて視野が広い」プロレスをするタイプだという。
「そこにいる、存在している。それがプロレスで何より重要なことなんだと思います」
スターダムは業界最大の女子団体であり、選手たちの競争も激しい。誰もが埋もれないために必死になっている。その中でKAIRIの発想は独特で、それゆえに目立つ。選手たちに与える影響もありそうだ。KAIRI自身は枠にとらわれず、IWGP女子王座をめぐる闘いで「あっと驚くカード」を実現させたいとも考えている。
「このベルトと一緒に冒険に出る。そんな感覚です。そうやってプロレス界に少しでも貢献できたらなって。そろそろ自分のゴールも視野に入ってきてます。こういうことをやって、こう散っていきたいっていう。それがあるから、ブレずに最後の冒険ができそうです」
話の中にトリプルHも月山和香も出てくる。結果が出せず泣いた日々があり、世界の大舞台でベルトを巻いたこともある。そのすべてがKAIRIのキャリアだ。そしてここから、IWGPのベルトとともにどんなページが書き加えられていくのか。目が離せない冒険になる。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。