30代前半でグランドスラム予選にかかるところまで…

　日本選手は海外の同レベルのランキングの選手たちに比べると、用具契約や所属契約などスポンサーの面で恵まれているともいわれるが、賞金だけでは食べていけない選手がほとんどだ。試合の連続の中で自分に見切りをつけることは難しく、夢＝グランドスラムに届くことなくコートを去る日をいずれ迎える。

　経済的に苦しい日本の選手の可能性を少しでも広げようと今年スタートしたのが、『SBCドリームテニスツアー』という大会だ。6月のファースト・ラウンド、8月のセカンド・ラウンドを経て、12月の10日と11日にファイナル・ラウンドが開催される。各ラウンドとも男女それぞれ16人の出場枠で、ファースト・ラウンドとセカンド・ラウンドの優勝賞金は100万円、ファイナル・ラウンドは1000万円。全日本選手権の優勝賞金が400万円だから国内では破格の金額で、1000万円といえばATPツアーならもっとも低い『250』カテゴリーでは決勝まで勝ち上がらなければ得られない額だ。

　ファースト・ラウンドで優勝したのは今井だった。それはSBCメディカルグループとのスポンサー契約にもつながった。ありがたい資金と支援を力に、今いる場所からより高いステージへ上っていくことはできるだろうか。

「人それぞれ花咲く時期は違うし、世界的にも選手の寿命は長くなってきている。天才肌でもなく不器用な自分が、これからどこまでいけるかというところは、次世代に何か伝えられる部分なのかなと思います。どんなにがんばっても30代前半でグランドスラム予選にかかるところまでいけなければ、（あきらめることを）考えないといけないとは思いますけど」

今井が挙げた“前例”の2人の名前

　少なくとも1968年のオープン化以降、30歳を過ぎてから初めてグランドスラムの本戦に出場した日本の男子はいないが、予選なら前例があるといって今井はすでに引退している2人の名前を挙げた。近藤大生と吉備雄也。近藤は31歳だった2014年の全豪オープン、吉備はその3年後の全豪オープンで30歳にして初めてグランドスラムの予選に挑んだ。しかし予選の壁は厚く、結局それが最初で最後の挑戦となった。近藤も吉備も、抱いていた夢はもっとずっと大きかっただろう。しかし、その足跡が29歳の今井に与えるものは絶望ではなく希望なのだ。

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