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1部屋に3人で宿泊、コーチもシェア…全日本王者・今井慎太郎29歳が明かす“プロテニス選手”の現実「トカゲと一緒に寝たことも(笑)」 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byAkemi Hosaka

posted2022/12/08 17:30

1部屋に3人で宿泊、コーチもシェア…全日本王者・今井慎太郎29歳が明かす“プロテニス選手”の現実「トカゲと一緒に寝たことも(笑)」<Number Web> photograph by Akemi Hosaka

神奈川県出身、早稲田大学を卒業し、現在テニス界に身を投じている今井。本人に今秋、全日本王者となるまでの日々を聞いた

上昇傾向の矢先、コロナ禍に突入

「シャワーのお湯が出ないとか、水が汚いので口に入らないように気をつけないといけないとか、そんなことはよくある話で、トカゲとかヤモリと一緒に寝たこともありましたかね(笑)。とにかく早くITFは抜け出したい一心でした」

 プロの道に進む誰もがそうであるように、最大の目標はグランドスラムだった。300位を切れば予選出場の可能性が見えてくる。プロ2年目に300位台まではいったが、そこから200位台に乗るまでに2年以上かかった。その間に600位台まで落ちた時期もある。自己最高の290位に達したのは2020年1月のこと。さあここからというところで、コロナ禍に突入した。乗りかけた波を見失い、ツアーが再開してもケガによる離脱やスランプで現在は479位まで後退している。

グランドスラム本戦出場の日本男子は過去10年で8人のみ

 テニスプレーヤーがそのイメージ通りの夢ある職業として成り立つボーダーラインは、100位だと言われてきた。トップ100に入っていれば、グランドスラムの本戦が確実であり、スポンサーも好条件で多数望める。近年は早いラウンドでの賞金が特に増え、大会によって差はあるが、1回戦敗退でも1000万円前後の額が得られる。

 しかし「1回戦敗退でも」などと軽々しく言ってはいけない。年に4回あるグランドスラムのシングルスの本戦出場枠は128だが、過去10年間に一度でも出場したことがある日本の男子が果たして何人いるだろうか……たったの8人である。錦織圭の登場と活躍に牽引されて日本男子が大躍進したこの10年でもその程度しかくぐれない狭き門なのだ。

 ではその舞台を夢見て戦っている選手は何人いるか。正確な数字を出すのは難しいが、参考として世界ランカーの数を見てみたい。ATPポイントを1ポイントでも有していれば世界ランキングに名前が載るが、12月5日付では世界全体で1993人いるランカーのうち日本人は72人。故障した選手の救済措置であるプロテクトランキングは考慮していないが、この72人のうちトップ100は西岡良仁とダニエル太郎の2人だけで、トップ300でも他に5人しかいない。30人が1000位以下に名を列ねている。その中にはまだプロ転向していないジュニア選手や大学生も数人いるが、その一方でATPポイントを持っていないプロもいる。ちなみに、ITFサーキットでは本戦で1勝しなければATPポイントは得られない。

【次ページ】 30代前半でグランドスラム予選にかかるところまで…

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