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[失意を乗り越えて]チュートリアル「完全優勝という名の美しき景色」
posted2022/12/01 07:02
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph by
Takuya Sugiyama
第1回大会で突き付けられた、カリスマからの厳しいジャッジ。そこからスランプは続いた。彼らはいかにして立ち直り、他の漫才師を圧倒したのか。16年の時を経て詳細に振り返る。
チュートリアルの徳井義実はしみじみとした口ぶりでいった。
「M-1で勝つためには、ただウケるだけじゃダメなんです。圧倒的にウケるか、審査員をノックアウトするくらいのパンチ力がないと。決勝に残れなかった年も、そこそこはウケていたけど、そういう部分が足りなかったんでしょうね」
2006年12月24日――彼と福田充徳のコンビは、M-1グランプリ2006で審査する7人全員から支持を得て、大会史上初となった完全優勝を果たした。
チュートリアルが1本目のネタ「冷蔵庫」を披露している間、審査員の松本人志は頬を緩めっぱなしだった。心底から漫才を愉しむ松本をみて、当然チュートリアルにも熱が入る。
徳井は冷蔵庫を買った福田に絡む。
『何を冷やそかな~って考えてんの?』
『……お茶と水や』
『ポン酢もやろ~』
『確かに、ポン酢も冷やすけど』
『昼は漫才して、夜はポン酢冷やしてかい』
『なにが悪いねん!』
眼を剥き唇を尖らせ、尋常ならざる世界観を展開させる徳井。対する福田は呆れたり困惑の末、脂汗で顔がテカテカに光っている。両人の掛け合いは爆笑を生んだ。
4分間のネタが終了後、松本は95点を付け、「ほぼ完璧かな」と講評している。
16年の歳月を経て、徳井は懐かしそうに振り返る。