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“オルフェーヴルまさかの斜行”がもう10年前…海外競馬評論家・合田直弘に聞く凱旋門賞の攻略法「日本馬は迷宮に入り込んでしまった」 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byAFP/JIJI PRESS

posted2022/11/26 17:25

“オルフェーヴルまさかの斜行”がもう10年前…海外競馬評論家・合田直弘に聞く凱旋門賞の攻略法「日本馬は迷宮に入り込んでしまった」<Number Web> photograph by AFP/JIJI PRESS

2012年の凱旋門賞、豪快な末脚で抜け出したオルフェーヴル(左)だったが、内側に斜行し減速。伏兵ソレミアに差されて栄冠を逃した

「2021年のBCディスタフを制したマルシュロレーヌ、そしてフォレ賞で2年連続3着に入ったエントシャイデン。この2頭の活躍で、正解がわからなくなってしまったんですよ(笑)。マルシュロレーヌは素晴らしい馬ですが、日本のダート界の最強馬というわけではなかった。にもかかわらず、ハイレベルな内容のBCディスタフを勝ちきりました。そしてエントシャイデンも、田んぼのような馬場のロンシャンで行われたGIで2年連続3着です。日本では重賞未勝利のオープン馬で、軽い芝が向いているとされるディープインパクト産駒なのに……。どちらも非常に立派な成績ですが、解釈によっては『環境の違いや馬場の悪さは言い訳にならない』という話にもなってしまう。この両馬の好走を論理的に説明できないことには、凱旋門賞へのアプローチの正解も見えてこないんじゃないでしょうか」

エルコンドル式の長期滞在が「現実的ではない」理由

 では過去の好走馬から、ヒントを見出すことはできないのだろうか。

 これまで凱旋門賞で2着に入った日本馬は、1999年のエルコンドルパサー、2010年のナカヤマフェスタ、2012年と2013年のオルフェーヴルの3頭だ。そのうちエルコンドルパサーは、春から長期間フランスに滞在し、イスパーン賞2着、サンクルー大賞1着、フォワ賞1着というステップを踏んで馬を現地仕様に“チューニング”した。迎えた凱旋門賞では、悪天候で緩んだ馬場や斤量差というディスアドバンテージがありながら、同年の仏愛ダービー馬モンジューと半馬身差のマッチレースを演じてみせた。

 そうした成功例があるだけに「有力馬をフランスに長期滞在させればいいのでは?」といった意見が出ることもあるが、自身もエルコンドルパサーの遠征に携わった合田氏は「残念ながら、やれない理由が多すぎる」と語る。

「エルコンドルパサーの場合は個人馬主さんだからできたのであって、あんなに費用と手間のかかる遠征というのは、ちょっと現実的ではないですね。現在の日本競馬界は有力馬の多くがクラブ法人の所有馬ですから。費用対効果を考えると、クラブの会員さんを納得させるのはまず不可能だと思います。近年ではディアドラがイギリスに長期滞在して活躍しましたが、個人馬主であっても、ああいったチャレンジはなかなか難しいでしょう」

【次ページ】 オルフェーヴルの無念「あの年じゃなければ…」

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