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「すごい見つめられている感があって…」高橋大輔&村元哉中が奏でる新たな関係性「音楽が鳴った瞬間、大ちゃんの目力が変わるんです」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/11/23 17:03
NHK杯でフリーダンス『オペラ座の怪人』を演じ切った直後の高橋大輔と村元哉中
「マリーナから言ってもらったコンセプトは素敵だと思いますし、それにプラス、自分がその時に感じたまま自由に演じています。クリスティーヌになりきって、ファントムへのどんな思いを抱えているのか考えながら滑っています」
観客席のどこを見るかまでは相談していなかった
2人は、新たな『オペラ座の怪人』をたずさえ、2022年のNHK杯に臨んだ。
初日のリズムダンスは、2人のリズム感がよく生かされたラテンナンバー。スタートの位置からウィットが利いていた。ジャッジ対面の壁際で、外側を向いて立つ。初戦のスケートアメリカではテレビカメラのレンズを覗き込み、デニス・テン杯ではコーチと目が合った。ところが今回は、目の前が観客席。どこを見るかまでは相談していなかった2人は、それぞれの行動をとった。
「私が見てた人は、こっちをすごいジーっと見ていたので、私も目を離さないように見つめ返しました。お客さんがいるとすごいパワーをもらえます」(村元)
「僕は人の目を見ないようにしてたんですが、すごい見つめられてる感があって、ついつい見てしまって、最終的には目が合いました(笑)」(高橋)
冒頭の『Conga』に合わせて、熱いラテンのダンスがスタート。ジャッジサイドに向かって、2人が動きをシンクロさせながら、足さばき、顔の動き、腰の回転をピタリとあわせてキメる。ジャッジの胸をも熱くしたこのコレオグラフィックリズムシークエンスは、出来栄え(GOE)で「+4.93」がついた。独創性やユニゾン、音楽性を高める演技などが評価されたことになる。
村元が「ラテンの速さに馴染んできました」というと、高橋も「速さに馴染んで、テンポ以上に、どうやって演じるかということに気持ちがシフトしてきています。自分の気持ちを奮い立たせる意味でも、いつも以上にオーバーリアクションだったかも」と笑った。
村元の語りに、高橋が割って入り…
中盤のスローパートでは伸びのあるスケーティングと、曲線美を生かした絡み合いで、艶やかに演技。最後のラテンは、顔、胸、腰、足のすべてをリズムに反応させ、情熱を爆発させた。得点は75.10点。スケートアメリカを5点以上も上回るスコアだった。
「今回は、会場入りした時にお互いのリズムが合っていなくて、公式練習で調整しながらの本番。100%ではない状態でもここまで出来るということで、成長を感じました」。高橋はそんな風に手応えを語った。
フリーダンスについて聞かれると、2人の関係がそのまま伝わってくるような場面があった。記者からの質問に、まず村元が語りだす。