野ボール横丁BACK NUMBER
近江・山田陽翔が証言…浅野翔吾は何がスゴイのか? 4打席目の“申告敬遠”は「納得できないところはありました」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNumberWeb編集部
posted2022/10/19 17:02
今年の夏の甲子園、山田陽翔(近江)と浅野翔吾(高松商)の対決。全4打席の舞台裏を山田本人に聞いた
山田 伝令が来るってことは何かあるんだろうなとは思ったんですけど、ただ、それがそんなことだとは思わなかったです。でも、言われたら従うだけなので。わかりました、と。
浅野はどこがスゴかった?
――指示を受けたあと、しきりに首を傾げていましたが。
山田 そうですね。納得できないところはありました。自分も、打たれたままで終わるのは嫌やったんですけど。でも、それは自分の一時的な感情の問題ですから。
――それにしても、申告敬遠後の悔しそうな表情が印象的でした。
山田 負けず嫌いです。ピッチャーはだいたいそうなんじゃないですか。
――あの試合、そこまで3打数3安打と打ち込まれていましたが、もう一度、対戦したら抑える自信はありましたか。
山田 抑えられるという保証はありませんけど、試してみたいことはありました。最初の2打席は腕が伸びるところのボールを打たれて、3打席目はインコースで窮屈なバッティングをしていた。なので、攻めるならやはり懐かなというのがあって。次はもっとスピードのある真っすぐで押していってやろうと思っていたんです。そうすれば浅野も混乱して、ボール球に手を出すんじゃないかな、と。
――これまで甲子園で何人もの好打者と対戦してきたと思うのですが、その中で、浅野君の長所はどこにあると思いましたか。
山田 低めを振らないところじゃないですか。甲子園の後、(日本)代表で一緒になったときに聞いたんですけど、「低めは割り切って捨てていた」と話していました。さすがだな、と思いましたね。
監督の敬遠策は「正しかったということ」
――いちばんいいバッターでしたか。
山田 いいバッターなのは浅野ですね。ただ、勝負強いのは松尾じゃないですか。
――5度目の対戦となるはずだった第5打席は、ピッチャー交代を告げられてしまいました。やはり悔しかったですか。
山田 前の回、大きいファウルを打ったときに足をつってしまって。何とかしようと思ったんですけど無理でした。あそこはもう仕方ないかなと思います。
――七回に浅野君を敬遠した後、3失点し逆転を許したものの、その裏、近江はすぐに逆転し返しました。そのまま7-6で逃げ切りましたが、あの展開で、よく勝てたなと思ったのですが。
山田 自分自身の話でいえば、もちろん勝負はしたかったですよ。したかったですけど……あそこで逆転されても負けるとはまったく思ってませんでした。雰囲気が悪くなっても、自分たちでどうにでもできると思っていたので。試合には勝ったんで、監督の采配は正しかったということだと思います。
《つづく》
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