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“無敗の22歳”平良達郎は沖縄から世界へ羽ばたけるか? UFC2戦目に挑む超新星の地元愛「大好きな沖縄そば屋さんがあって…」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2022/10/15 11:02
ここまでプロ・アマを通じて全勝という完璧なキャリアを誇る平良達郎。写真は1Rで一本勝ちした2021年3月20日の前田吉朗戦
一方、平良も祖父から戦争経験を聞かされた記憶がある。
「アメリカ兵に捕まったときの話をよく聞かされていました」
入門時から光っていた「野球仕込みのストレート」
Theパラエストラ沖縄への入門は2015年初夏だった。このジムでキックボクシングを習っていた平良の実兄・龍一の影響だった。松根は当時をこう振り返る。
「もともとウチは高校生の入会者が多い方だけど、お兄ちゃんに薦められて入ってきたうちのひとりという印象でした」
試しに平良を相手にミットを持ってパンチを受けたあと、「すごくストレートがいいね」と声をかけたことを覚えている。
「中学で野球をやっていたことが良かったんでしょう。ストレートの強さが光っていた」
松根は指導方針を思い描いた。
「この子が選手としてやっていくのであれば、ストレートを大事にした方がいい」
現役時代の松根はパラエストラ松戸に所属し、修斗の世界バンタム級王者として活躍した。千葉に住んでいた当時を含めると、かれこれ20年以上指導を続けている。
「寝技はそうとも限らないけど、打撃はある程度センスがモノをいう。達郎の場合、アマチュア修斗を始めて、プロを目指したいという流れになった。オーソドックスで右ストレートがいいのであれば、さらにフックを教えるとストレートがブレる。だから達郎には『ストレートだけを打ちなさい』と教えました」
師のこだわりを持った右ストレートを身につけるとともに、平良は寝技のスキルも向上させていく。プロデビューしてからの決まり手の大半は絞め技かパウンド(寝技でのパンチ攻撃)。昨年7月4日には王者・福田龍彌を三角絞めで破り、修斗世界フライ級王座を奪取した。結局国内ではプロで10戦ほど闘っているが、一度も負けていない(もっというと、アマチュアでも10戦全勝)。つまるところ、平良は鳴り物入りでUFCと契約したことになる。
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UFCでのデビュー戦が2週間延期されると、平良とともに松根もラスベガスにとどまった。
「その期間中、達郎にはマンツーマンで接することができた。沖縄にいるとほかの選手の指導をしながら達郎も見るという感じだけど、アメリカでは達郎だけに集中することができた。延期になったことで生まれたデメリットもあったけど、そこはプラスになったと思いますね」