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“無敗の22歳”平良達郎は沖縄から世界へ羽ばたけるか? UFC2戦目に挑む超新星の地元愛「大好きな沖縄そば屋さんがあって…」
posted2022/10/15 11:02
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
今夏、沖縄県では現地在住の総合格闘家をモデルとしたポスターが至るところに貼り出された。その正体は、22歳の平良達郎。9月11日の沖縄県知事選挙のイメージキャラクターとして起用されたのだ。キャッチコピーは「僕らの未来は、僕らが創る」。
NHKの朝ドラ『ちむどんどん』の舞台ともなった沖縄北部の名護市で「エボリューション・ムエタイジム」を運営する大島健太さんは、「貼られている数がハンパなかったので、しょっちゅう目にしました」と語った。
若くして“世界最高峰”のUFCファイターに
ポスターでの平良の肩書には「沖縄初のUFCファイター 修斗世界フライ級チャンピオン」と記されていた。北米を活動の拠点に全世界で大会を打つ総合格闘技プロモーション『UFC』と契約することは、総合格闘家にとってひとつの大きな目標となる。UFCファイターというだけでも、世界最高峰の舞台で闘っているという証になるからだ。
今年2022年1月14日、平良はアメリカのMMAスポーツマネージメント会社Iridium Sports Agency(イリディアム・スポーツ・エージェンシー)と契約。2月4日にはUFCと複数試合契約を結んだことを発表した。
「(有望な若手を発掘するために開催される)コンテンダーシリーズを挟まないで、UFC本戦にいける。僕は運がいいというか、恵まれた対応をされたと思います」
当初UFCデビューは4月30日(現地時間)にラスベガスで組まれる予定だった。しかし開始数時間前に対戦相手のカルロス・カンデラリオが体調不良を理由に欠場することになった。試合に向け気持ちを整えていた平良は「こんなこともあるんだ」と驚くしかなかった。
「通訳の方から『まだホテルに待機していてください。日本に戻らないで』というお達しがあったんですよ。結局、2週間後の大会にスライドしてやることになりました」
新たな日程は5月14日。日本時間だと15日で、沖縄がアメリカ占領下から日本に復帰した50周年にあたる記念日だ。セコンドとして現地入りしていたTheパラエストラ沖縄の松根良太代表は運命めいたものを感じた。
「僕の祖母は戦争を体験していて、父親と母親はアメリカの統治下の沖縄で生まれ、米ドルで生活していたという話を聞いたことがあります。そんな沖縄の独立記念50周年という日にアメリカに乗り込んで闘う。競技スポーツに政治的な問題を持ち込むのはナンセンスだけど、そんなことを考えざるをえなかったですね」