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元野球部の柔道二段…トランスジェンダーの“新人女子レスラー”エチカ・ミヤビとは何者か?「プロレスはどんな人間もウェルカム」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2022/10/12 17:01

元野球部の柔道二段…トランスジェンダーの“新人女子レスラー”エチカ・ミヤビとは何者か?「プロレスはどんな人間もウェルカム」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

9月14日、世羅りさ戦でデビューを果たした新人女子レスラーのエチカ・ミヤビ

ちゃんよたに誘われプロレスの練習へ

 今年に入ってからは、筋トレ好きな女性が働くバー「筋肉女子・マッスルガールズ」のシフトにも入った。

「働いてたお店がまん防(まん延防止等重点措置)で休業になってしまって。女子じゃないんだけど筋肉はあるから(笑)、と思って面接を受けたら合格しました」

 同じくマッスルガールズで働いていたのが、ちゃんよただった。筋トレYouTuberでありセクシー女優であり、昨年9月にプロレスラーとしてもデビュー。異色の経歴だが、パワーファイターとしてのポテンシャルは高く評価されている。エチカも会場にちゃんよたの試合を見に行き、選手と観客の一体感に魅了された。

 ちゃんよたに誘われて練習に行ってみると、それも楽しかった。

「ロープワークってもの凄く痛いんです。受身も柔道とは勝手が違う。すぐに起き上がって、相手を見て、距離や体勢を見ながらどう動けばいいか反応する。プロレスは考えることが多いなと思いました。でも新しい技を覚えていくのは楽しかった」

いきなりトップ女子レスラーと対戦

 朝方までお店で働きながら、休まず練習に通った。お酒を飲むのも仕事のうちだが、帰宅して少し寝て「気合いで起きて」午前中の合同練習へ。3時間のトレーニングに集中し、また少し寝てお店に向かう。その頑張りが認められてのデビューとなった。

 プロレスラーとして初めて闘った相手は世羅りさ。アイスリボン時代にシングル、タッグ両方のチャンピオンになったトップ選手だ。結果としてはコンバイン(抱え込み式逆エビ固め)での完敗だったが、エチカは打点の高いドロップキックなど随所で将来性を感じさせた。世羅もインタビュースペースでエチカを「可能性は無限大です」と称えている。

 本人も「練習してきたことが200%出せました」とコメントした。ただ実を言うと、試合直後は何も覚えていなかった。世羅の得意技であるニードロップをボディに食らって「一瞬、痛みで意識がなくなりそうだった」そうだ。試合を落ち着いて振り返ることができたのは、映像を見てからだ。やはり、プロの世界は一筋縄ではいかなかった。

「不平等だ」という意見もあるが…

 デビュー発表の記者会見で、エチカがトランスジェンダーであることは公表されている。その上で女子プロレスラーとしてリングに上がることも。ニュースサイトのコメント欄には、批判も多かった。

 トランスジェンダーの女子スポーツ参入については、問題視される部分がある。心は“女”だと主張すれば“男”の体で女子と試合ができるのか。それは有利に決まっている、競技として不平等だと。さまざまな議論がなされているが、ことプロレスに関しては事情が異なると言うしかない。

【次ページ】 「プロレスはどんな人間もウェルカムな、自由な世界」

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