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あのメイケイエールが“オリコン3位”にランクイン! なぜ競走馬の写真集がブームに?「馬への愛情の向け方が変わってきている」
posted2022/10/01 17:01
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
2020 Kosaido Publishing / GUIDEWORKS CO.,LTD.
「最初は社内で慎重な意見もあったんです。『GI馬じゃないのに、大丈夫なのか』と。でも、いざSNSでプロモーションを始めたら予想の10倍以上の反響がありました」
そう語るのは、9月16日に発売された『メイケイエール写真集 一生懸命、全力疾走』(ガイドワークス)の編集を担当した山本康行さんだ。
いま、サラブレッドの写真集が静かなブームとなっている。2021年秋の『ソダシ写真集 白く強く輝く』(廣済堂出版)に続き、2022年8月27日には『メロディーレーン写真集 小さくたって』(廣済堂出版)が登場。さらに先述のメイケイエールと、アイドル的な人気を誇る馬の写真集が立て続けに刊行され、いずれも好調な売れ行きを記録している。
ソダシの写真集が企画された経緯とは
注目したいのは、上記の3頭すべてが現役の競走馬であることだ。ソダシとメロディーレーンの写真集の企画を立案した廣済堂出版の岩崎隆宏さんは、「“いまの輝き”を形にして残したかった」と語る。
「構想が立ち上がったのは、2020年にソダシが札幌2歳ステークスを勝ったころです。希少な白毛馬で、しかも強い。すぐに出版物ができないかと考えましたが、名馬列伝のような読みものの場合、基本的には引退したあとになってしまう。現役中に刊行するとなると、あの美しいビジュアルを活かした写真集がいいだろう、と。その年の暮れに阪神ジュベナイルフィリーズを勝ったときに、『これはなんとかして実現したい』と本格的に動き出しました」
競馬に関する書籍を数多く手がけてきた岩崎さんにとっても、現役馬の写真集は初めての試みだった。引退した名馬を題材にする場合とは異なり、予期せぬ不調やアクシデントも考えられる。もちろん、勝ち続ける保証もない。「競走馬としての物語が完結していない段階でも、やる価値がある」と決断した背景には、“世界初の白毛のGI馬”という希少性に加えて、「コロナ禍でファンの現地観戦が難しかったこともあります」と明かす。
「時代的に、ひと昔前だったら実現できなかった企画かもしれません。ただ非常にありがたいことに、金子真人オーナーはもちろん、須貝尚介調教師はじめ厩舎のみなさんや、ノーザンファーム、ノーザンホースパークの方々にも快くご協力いただきました。お陰さまで、なかなか現地でソダシを見ることができないファンにも喜んでもらえるものができたと思います。人間のアイドルの場合もそうかもしれませんが、やっぱり写真集は現役中に出すものだな、と感じました」