「1年勝負のつもりで独立リーグに来ました。だから、ここで決めないと。だけど、僕はやるべきことを毎日、淡々とやっていくだけ。ずっとそれを貫いてここまで来られたので、最後まで変えることはありません」

一浪→九大→独立L…指名なるか？

　芦谷は、1つひとつの言葉を丁寧に、ハキハキと応える。聡明な雰囲気を醸し出す一方で、ひとたび野球の話題になると表情が一変する。生粋の負けず嫌いな性格が伝わる。

　直球の最速は145キロ。最も得意とする変化球はスライダーで、馬原監督によれば「一級品。ボールの回転数はNPBでもトップクラスに相当する数値です」という勝負球だ。さらに今年からチェンジアップも習得し、投球の幅も広がった。球種はさほど多くないが、決して投げやすいとは言えないマウンドでの試合が多い同リーグでも、制球面で崩れない安定感も光る。

　これまでの取材で接してきたサウスポーの中で例えるなら……聡明さと熱さを併せ持っている点で、和田毅や杉内俊哉を彷彿とさせる。

2009年撮影。左から馬原、和田毅、杉内俊哉　©Hideki Sugiyama

　プロ野球は160キロ近いボールを投げたり、ものすごい変化をする特殊球を操ったり、大きな体躯に恵まれていたりする規格外のツワモノが揃う世界だ。だが仮に一芸を持っていたとしても、芽が出ない投手を散々見てきた。“心技体”とはよく言ったもの。精神面の“芯”の強さこそが、芦谷の最大の魅力ではなかろうか。

　芦谷のメンタル面の強さも、周りを引きつける不思議な魅力も、数値化も可視化もできない。それゆえスカウトが最も評価しづらい部分といえる。だが、そんなピッチャーだからこそ思う。NPBの世界で見てみたい、と。

※芦谷は今シーズン、19試合登板、13勝1敗、防御率1.95。勝利数、防御率、奪三振（125）はリーグ断トツの成績を残した。また、火の国サラマンダーズはリーグ2連覇を決め、9月30日から行われる、独立リーグ日本一を決める「日本独立リーググランドチャンピオンシップ2022」（熊本・リブワーク藤崎台球場で開催）に出場する。

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