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母校の後輩たちも驚く“地元のスター・茜ちゃん”の世界選手権2連覇…バドミントン山口茜の恩師が語る強さの秘密「朝練も居残り練習もしなかった」 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byGetty Images

posted2022/08/30 11:01

母校の後輩たちも驚く“地元のスター・茜ちゃん”の世界選手権2連覇…バドミントン山口茜の恩師が語る強さの秘密「朝練も居残り練習もしなかった」<Number Web> photograph by Getty Images

バドミントン世界選手権・女子シングルスで日本人史上初の連覇を達成した山口茜。恩師や後輩たちが応援に駆けつける中、見事な優勝を飾った

 霊峰白山のふもと、九頭竜川沿いに街並みが広がる人口2万余りの福井県勝山市に山口は生まれ育った。

 春は九頭竜川右岸に続く弁天桜並木で桜まつりが行われ、夏はアユ釣りで賑わう。秋は近隣の山々が紅葉し、雪深い冬はスキーを楽しむことができる自然豊かなこの街で高校時代までを過ごした。

 街では山口のことを誰もが「茜ちゃん」と親しみを込めて呼ぶ。高校を卒業して地元を離れた後も、おらがまちのスターを応援してきた。

 凱旋試合が行われればアリーナは人で溢れ、応援カレンダーポスターなるものも登場し、街をあげて後押しした。昨夏の東京五輪の際も、パブリックビューイングが開かれ、エールを送った。

 そうした地元の熱烈な応援を受け、山口も「勝山を離れても変わらず応援してくれることが力になっている」とことあるごとに感謝を口にしている。

 高校から県外の強豪でプレーする選手も多いなか、地元の高校を選んだのは、幼い頃からこの環境で強くなってきた、環境を変えずともやれるという自信を持っていたからだ。実際、高校時代はインターハイ女子シングルスで3連覇を達成し、15歳で日本代表にも選出された。2回のオリンピックを経験し、代表歴も今年で10年目を迎えている。

朝練も居残り練習もしなかった高校時代

 高校2年時には全日本総合選手権を制し日本一にも達成した。

「他の部員と同じようにメニューはきっちりこなしていました。ただ、茜はコートに入るとそれ以上のこと頭で考えながら実施していくので、他の選手よりも精度が高かったですね。でも、朝練をするとか、居残って何かトレーニングをしたり、コートに入っていないときにサイドのスペースを使ってトレーニングすることはなかった。もちろん、リクエストすればきちんとやっていましたけど」と小林は振り返る。

 実は、それも山口なりの理論があっての行動だった。

「(山口は)いろいろな考えをめぐらせながらコートに入っているので、集中力が持続するのはどんなに頑張っても2時間が限界だと言っていました。

 練習が2時間を超えると、集中力が途切れ、何も考えずにプレーしている状態までレベルが下がってしまうからと。うちは進学校でもあるので、平日の練習は授業が終わった後、17時から19時までの2時間程度。強豪校と比べると圧倒的に練習時間が少なかったと思いますが、茜はメリハリがついてちょうどいいんですとよく言っていました」(小林)

 限られた時間だからこそ集中できる。自身がやるべきことを明確にし、遂行していく。高校時代からそう考えられていたことも、山口の強さの1つだろうと小林は言う。

【次ページ】 「先生、史上初じゃないですか?」

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