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野球クロスロードBACK NUMBER
創部初・甲子園ベスト4の裏で…聖光学院キャプテンがこぼした“切実な告白”「夏の大会が怖くなったか?」「それもあるんですけど…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/08/27 11:01
斎藤智也監督に「今年はグラウンドに監督がいる」と評された聖光学院のキャプテン・赤堀颯
<俺がもっと強い男にならなアカンということや。本当に今まで苦しかったなって思う。Bチームとして終わりを迎えるにあたり、心から嬉しかったのはチームみんなで泣けたということだ。何よりも、どんなことよりも嬉しかった。『泣けるチームを作ろうぜ』と話してきたことが達成できた>
これが、赤堀たちが最上級生となって掲げるようになったスローガン「全員主役」の原点でもある。赤堀が同世代でキャプテンとして先頭に立つからこそ、チーム全員が輝く。それは、Bチームの監督も務める部長の横山博英の評価を聞けば、誰もが納得する。
「1年から赤堀が引っ張ってきたチームだから。あいつは熱さと本気だけで突っ走るようなことはなく、周りとバカなこともやれる協調性もある。そんな男がキャプテンなんだから、赤堀を否定する雰囲気にはならないよね」
「全員主役のチーム」が目指すもの
昨年秋。東北大会の決勝で敗れ、目標としていた明治神宮大会への出場は叶わなかった。赤堀は悔しさを打ち払うように、「スタンドの力がすごく支えになった。全員主役になれたと思います」と、センバツ出場はチーム全員で掴み取ったと強調していたものだ。
秋のチーム打率が2割台だったことからも、野球そのものの力が突出して高いわけではない。そこを補い、試合で勝つために赤堀たちは「無形の力」を求めた。選手一人ひとりの力を束にする――そう、結束力である。
「お前たちももっと個性を出せ」
監督の斎藤智也が控え選手たちを煽る。選手間ミーティングでそのことを深掘りしていくなか、エースの佐山未來が提案する。
「『無類のチーム』ってよくない?」
チームの目指すべき道が、さらに拓ける。赤堀が当時の情景を鮮明化する。
「みんなの心に響いたんです。『全員主役のチームが目指すのはそこだ』って、そこから口癖のように出るようになりました」
「聖光学院を超えなきゃいけません」
センバツ前の合宿でのことだ。フリーバッティング中、主力たちが球場のスタンドでボール拾いをしている。本来、優先的に練習をするべき選手たちが裏方をする。そのことについて赤堀に尋ねると、嬉しそうに説明した。
「うちには下っ端とかいないんで。秋まではメンバーが引っ張ってきた部分は多少あったんですけど、今は自分らが控え選手に引っ張られている部分もあるというか。『こいつらがやってんだから、俺たちもやるべきことをやろう』って雰囲気がありますよね」
このあたりからだろうか。赤堀と横山の間では口癖のような問答が展開されるようになっていったという。
聖光学院とは何か? 横山が問う。
「ユニフォームを着ていなくても、『あれは聖光学院の選手だ』と判別されないとダメだ」
赤堀が返す。
「それだけじゃダメです。聖光学院を超えなきゃいけません。聖光学院と似ているけど、どこか違う。一人ひとりがもっとえげつない姿を見せないといけないと思っています」
キャプテンの生き様に斎藤も唸る。