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「ハニュウは別世界に行った」人気コラムニストが語る、羽生結弦の“アメリカでの可能性”「この国でフィギュアはスポーツというよりも芸術」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/08/26 11:00
2016年、アメリカ・ボストンで開催された世界選手権での羽生結弦
羽生はミステリアスな存在だった
羽生はソチオリンピックのシーズンから競技を引退するまで、個別取材の対応を極端に制限した。それでも我々日本のメディアは大会の会見、ミックスゾーン、囲み取材などでコメントをもらうことができた。また日本のテレビカメラの前で口にしたコメントを聞くこともできた。だが海外のメディア関係者にとっては言葉のハンディもあり、羽生はずっとミステリアスな存在であり続けたのだという。
「彼はヘルシンキ(世界選手権)の会見などで、片言の英語を話すこともありました。その気になったら、きっと英語を話せただろうと思うのです。一度でも良いので彼と二人で向き合って、話をする機会があれば良かったのに、と少し残念に思っています」
そう言うハーシュ氏だが、彼にとって羽生の人間的な部分に触れた忘れられない思い出はソチオリンピックでの優勝会見だった。彼が羽生に東日本大震災のことについて聞くと、「金メダルをとったからといって、復興に直接つながるわけではない。自分には何もできていないんだという無力感がある」と答えた。
「まだ19歳の青年が、アスリートとして最も大きなタイトルを手にして夢を達成した。その直後にあのような謙虚な言葉を口にしたことは驚きであり、私にとってはソチオリンピックでもっとも強い印象を受けたことでした」と語る。
今後のアイスショーへの期待
例えば羽生がアメリカでアイスショーを主催したら、興行的に成功させることは可能だろうか?
「ジェイソン・ブラウンのようなアメリカ人のスター選手をメンバーに加えることは、必要だと思います。でも特に初年は、好奇心をもって見に来るスケートファンはいると思う。中規模の会場だったら、チケットを売り切ることは可能だろうと思いますよ」
羽生のこれからのプロ活動が、日本やアジアのみならず北米でも計画されるとすればどのような形になるのか。様々な可能性が広がっていきそうだ。
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