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F1の「消えた悪童」マゼピンは今何してる? ロシア国内ラリーで優勝、金メダリストとビーチバレーも…本人は「まだまだドライブに夢中」
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万葉了Ryo Bamba
photograph bySPUTNIK/JIJI PRESS
posted2022/08/14 11:03

7月、シルクウェイラリーで優勝し嬉しそうなマゼピン。F1のシートを失った3月以降、彼はロシア国内で何をしてきたのか
ただ、マゼピンが単なる嫌われものだったかというと、そうではない。ハースのチーム代表、ギュンター・シュタイナーはシーズン中「彼はみんなが思っているほど嫌な奴ではないし、ユーモアのセンスもある」と擁護した。チームだけでなく各メディアからもロシア人ルーキーの成長に期待する声が上がりつつあったのも事実だ。
デビューシーズンは予選のQ1通過はできず予選最高位が18位、本戦も最高14位と結果を残せなかったマゼピン。マシンの性能も良化し、捲土重来を期していた今シーズンだったが、開幕直前に母国によるウクライナ侵攻が始まってしまう。直後の3月、ハースはウラルカリのタイトルスポンサー契約とともにマゼピンのドライバー契約を解除。わずか1年でシートを奪われてしまった。
「あきらめるつもりはない」
失意の中でも行動は早かった。同月にインスタグラムに動画を投稿し「スポーツ以外の理由で出場機会を失ったトップアスリートを支援する団体を設立する」と真剣な面持ちで宣言。財源にはウラルカリがハースに支払うはずだったスポンサー料を充てるとした。
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「オリンピックやパラリンピック、その他のトップイベントに向けて人生を費やしてきたにもかかわらず、所持しているパスポートだけを理由に出場が禁じられ、処罰を受けることになった選手たちに(資金を)配分する」(ロイター通信の取材に)
さらには4月、ロシア国営ノーボスチ通信に対し「この1ヵ月で人生が劇的に変わってしまったが、キャリアを続けたい」と意思表明。財団の活動に週5日を費やしながら過ごしているとも明かした。そしてF1復帰への意思を問われ、こう答えた。
「18年間モータースポーツをしてきたし、あきらめるつもりはない。F1に復帰したいと思っている。もしうまくいかなければ別の選択肢もある。ダカールやシルクウェイラリーのようなね」
優勝することができて信じられないほどうれしい
7月、有言実行を果たしラリーへ挑戦する。ロシア国内で行われたシルクウェイラリーのT3クラスに参戦、初優勝を果たした。