父ドミトリーは政権を支える新興財閥（オリガルヒ）で、プーチン大統領と蜜月関係にある1人として数えられる。EU（欧州連合）が3月、父ドミトリーを制裁対象のブラックリストへ追加した際、その理由を「ロシア政府に実質的な収入を提供する経済セクターに関わっている」とした。発表では、2月のウクライナ侵攻直後にプーチンが開いた会合の場に、他の実業家36人とともにドミトリーが招待されて今後の影響について議論したことにも触れている。

2017年、カザフスタンでの国際展覧会でプーチンと言葉をかわすドミトリー・マゼピン（右）　©Getty Images

　EUは同時に、プーチンの側近の息子であるニキータについても、侵略を支持する父に「関連した個人」と位置づけた。これはEU域内での資産凍結や渡航禁止措置の対象となったことを意味している。

父との関係が重い足かせに…

　いまだロシアによるウクライナへの軍事行動は継続しており、プーチンの家族をはじめとした他の個人・財閥などへの制裁も続く。侵略が終わらない限り、また情勢が安定化したとしても、対象者がEU以外の国や地域による資産凍結解除や海外での活動、社会的信用が認められるかは不透明だといえる。

　父と二人三脚でF1の世界へ歩を進めてきたマゼピンだったが、いま、その関係が重い足かせとなっている。選手としての命運は、母国の動向が握っているといっても過言ではない。

　それでもなお、契約解除後のどの発言を見ても、苦境に立たされた悪童の情熱は少しも色あせていないことがうかがえる。彼のインスタグラムの紹介文にはこう綴られている。

「元F1レーサー。まだまだドライブに夢中」

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