甲子園の風BACK NUMBER
あの広陵がまさか…名将・中井哲之監督が語っていた“優勝候補が恐れるモノ”「広陵に負けたらしょうがない、と満足する高校もある。逆に…」
posted2022/07/21 11:02
text by
元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph by
Sports Graphic Number
広島大会の3回戦で番狂わせが起こった。
優勝候補に挙げられていた広陵が英数学館に1対2で敗れた。ゲームセットの瞬間、両手を挙げてホームベースに駆けてくる英数学館の選手。それとは対照的に、広陵の選手たちはうなだれ、肩を落として動けない。整列するまでに40秒もの時間がかかった。
優勝候補がまさか…大会前に語っていた昨夏のこと
第1シードの広陵は、準優勝した昨秋の明治神宮大会で話題を集めた内海優太(3年)と真鍋慧(2年)という強打者を揃えていた。同大会では、明秀日立、花巻東という強豪を破り、県勢として初めて決勝に進出。大阪桐蔭に7-11で敗れたが、センバツにも出場した今年のチームに対する期待は大きかった。
初戦となった2回戦は前年覇者の広島新庄にサヨナラ勝ちした広陵だったが、なかなか波に乗れない。この日も序盤にリードを奪われると、チャンスをつくりながらあと一本が出ない。1点が遠い。そして1対2で迎えた9回表の攻撃――無死二、三塁という逆転機を迎えるも、二、三番が倒れ、ツーアウト。つづく四番・真鍋が放ったセンター後方への大飛球が好守備に阻まれて、3回戦で姿を消すことになった。
「夏の恐ろしさを感じた。投手を計算してしまった監督がいた。選手はよく頑張った。練習も生活も。選手に申し訳ない。負けたのは監督の責任」
試合後、中井哲之監督はこう語った。
「負けたのは監督の責任」
甲子園で通算34勝、センバツ優勝2回、夏の甲子園準優勝2回――名将の口から、2021年夏と同じ言葉が飛び出した。
中井監督から、4回戦で敗れた昨年の広島大会について聞かされたのは今大会開幕前のこと。
「10回裏ノーアウト一、二塁で三番・真鍋に回りました。バントのサインを出したけど、よう決めん。『この場面で1年生にバントさせるのは難しいんかの』と思って打たせたら、センターライナーでワンアウト。次の内海もセンターライナー、五番が三振して負けました」
中井監督が後悔したのは自身の采配だった。