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スターライト・キッド「やるならとことんやってやる」 ヒールからスターダムのトップへ、人気覆面レスラーの野望「不死鳥はもう飛べない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/07/08 17:05
ヒールユニット大江戸隊の司令塔として6人タッグ王座を獲得するなど勢いに乗るスターライト・キッド
キッドの覚悟「大江戸隊でやっていくしか道はない」
ヒールという立ち位置になったからには、そこで全力を尽くす。それが悩みに悩んだ末、キッドが選んだ道だった。大江戸隊入りを果たした当初、キッドはこう語っている。
「もう本当にやるしかない、大江戸隊でやっていくしか道はない。じゃあどうすればいいのか。“STARSのスターライト・キッドを1ミリも残さない”と。やるならとことんやってやる」
反則も乱闘もありのファイトは、やってみると「気持ちが晴れ晴れとしてスッキリ」した。大江戸隊のリーダーである刀羅ナツコは「メンバー全員の人生を預かっている」と言う。その言葉がキッドにも響いたそうだ。やりたい放題の荒れた試合も、メンバーの信頼関係あってこそ。大江戸隊の闘いぶりを見ていると、リング上の選手たちとリング下から試合に介入するセコンド陣が鮮やかに連動しているのが分かる。
確かに反則ではあるのだが、レフェリーが反則負けを告げるまでは「OK」なのがプロレスという特異なスポーツエンターテインメントだ。以前の大江戸隊はメチャクチャに暴れて反則負けという試合も多かったのだが、キッド加入後は反則を使いながらきっちり勝利する試合も目立つ。
「実力も勢いもナンバー1、それが今のSLK」
5月28日の大田区総合体育館大会でのアーティスト王座獲得は、キッドにとっても格別なものだった。6人タッグこそ個の力よりもチームワークが勝負のポイント。アーティスト王座をユニットとしての実力の証と捉える選手も多い。
キッドは舞華&ひめか&なつぽいの王者チームをかき乱しつつセコンドと連携。最後はアシストに回って勝負を鹿島沙希に委ねる。そして鹿島が得意の丸め込み「起死回生」で3カウント。キッド、鹿島とともにベルトを巻いた渡辺桃は、昨年キッドのスカウトによって大江戸隊に加入したメンバーだ。試合後のキッドは言った。
「今回のベルト、いつもと感覚が違うね。アーティストは7度目の挑戦にして初戴冠。STARS時代には獲れなかったベルトが大江戸隊にきて獲れた。
みんなで獲ったベルトだと思うよ。だってセコンドの動き見ただろ? 全員で闘ってるんだよ大江戸隊は。アーティストに限らず、どのベルトも大江戸隊みんなで獲ったものだと思う。その結果、ハイスピード、ゴッデス、アーティストと1年で3本のベルトを獲ってるわけで。実力も勢いもナンバー1、それが今のSLK(キッドの略称)」