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スターライト・キッド「やるならとことんやってやる」 ヒールからスターダムのトップへ、人気覆面レスラーの野望「不死鳥はもう飛べない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/07/08 17:05
ヒールユニット大江戸隊の司令塔として6人タッグ王座を獲得するなど勢いに乗るスターライト・キッド
スターダムのトップを目指すキッドの野望
アーティスト最多防衛を目指せるとも語ったキッドは、6月26日の名古屋大会で防衛戦。同タイトル史上初の3チーム同時対戦をクリアしてベルトを守った。「これで満足なんかしてない。もっと欲深く」というキッドは、“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムにも挑戦表明。王者・上谷沙弥に7月9日の立川大会で挑む。またしてもビッグマッチでの王座戦だ。
「高いところから眺めてる。せいぜい追いついてきな」
挑戦表明した際、長身のチャンピオンに言われるとわざわざしゃがみ込んでベルトを見上げたキッド。瞬時に“絵作り”まで考えるあたりの“プロレス頭”も抜群だ。リング上のマイクアピール合戦など、キッドが敵味方の“交通整理”を巧みにこなす場面もある。
覆面レスラーでも、男子でいう“ジュニア”に分類される小兵でもスターダムのトップに立ちたい。そんな野望を抱くキッドにとって、白いベルト獲得は大きな一歩になる。今回が3度目の挑戦。ハイスピードは8度目、アーティストは7度目の挑戦で戴冠したが、今回はそこまで時間をかける気はないという。
打倒・上谷のための新技とは?
そんな中、6月28日の後楽園ホール大会で組まれたのは月山和香とのシングルマッチだった。まだキャリア未勝利の月山とは実力的に差がある。キッドにとっても観客にとってもテーマが見出しにくいカードだ。だが、それすらただでは終わらせないのが今のキッドだった。
大会前日、ツイッターで「前回はテキサスクローバーホールドで仕留めたっけなぁ」と、月山との前戦をさりげなく“おさらい”。今回も同じ技を仕掛けて「これでフィニッシュか」と思わせた。が、それは伏線。月山が耐えると別の技に移行した。ギブアップを奪ったのは新技「黒虎脚殺(こっこきゃくさつ)」だった。
キッドによると、これは上谷を倒すための技だ。
「今日のシングルマッチ、特に意味も何もないでしょ。だから“白いベルト戦のために利用してやった”という意味をつけてやったよ。黒虎脚殺とこれまでの技で、不死鳥(上谷)を完全に殺す。もう飛べなくなっちゃうな、かわいそうに」
上谷とは身長差がある。それを埋める戦略としてはグラウンドが効果的だ。まして上谷は空中殺法を得意としている。脚を攻めることには“ゴールデン・フェニックス”上谷を飛べなくさせる意味があるのだ。テーマがないかのように見えた月山戦で、キッドは上谷にプレッシャーを与えたことになる。
リングでの動きも頭脳もキレまくっている。ヒールだから、大江戸隊だからそれが引き出されたという面もあるだろう。誰がどこから見ても絶好調。7月末から始まる長丁場のリーグ戦「5★STAR GP」まで、“闇に踊る空虎(スカイ・タイガー)”はスターダムの台風の目になるだろう。
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