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桜井まい「これだけやって負けられない」“フェリス卒のお嬢様”がスターダムの人気女子プロレスラーになった理由…アンチには「感謝してます」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/07/05 17:03
フェリス卒、CAの内定を蹴って芸能界→スターダムの人気プロレスラーとなった異色の経歴を持つ桜井まい
ジュリアの教育「まず重視したのは根性論」
「それは“プロレスとは何ぞや”がなかったからなんですよ。形だけで中身が伴ってなかった。この子(桜井)にどうやって力をつけさせるか凄く考えたんですけど、まず重視したのは根性論。技術はもちろんですけど、とにかく厳しい練習をやって、それについていくことが大事だと。たとえば腕立て伏せにしても、正しいフォームでやることばかり考えなくていい。形はグチャグチャでも最後までやり切ることでつく力がある。実際、逃げずによくついてきてますね。かなりきついことやってると思いますけど」
大きな結果が出たのは5月7日の大阪大会。メインの8人タッグマッチでフィニッシュを取ったのは桜井だった。コグマを丸め込んで3カウント。桜井は試合後、コグマと葉月が保持するタッグ王座への挑戦をアピールした。パートナーはもちろんジュリアだ。
大田区総合体育館での挑戦(5月28日)を前に、桜井は「今は試合で怖いものがないくらいです」と語っていた。なぜなら「試合よりも厳しいトレーニングをしているので」。
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DDMに入ると、ジュリアが桜井の試合をすべてチェックするようになった。そうして反省点を指摘してくれる。遠征先でも一緒に映像を見て話し合う。2人きりで練習することもある。そこで行なわれるのがジュリア曰くの「根性論」トレーニングだ。桜井によると技のアドバイスもたくさんもらった。“プロレスとは何ぞや”が頭に詰まったジュリアと多くの時間を共有すること自体が成長を促した面もあるだろう。桜井は言う。
「他の選手がやってない時間にも厳しい練習をして、そのことで前より自信がつきました。これだけやったのに負けられないという気持ちも出てきましたね。闘争心が強くなったと思います」
ジュリアとのタッグは「何か縁があるし絆がある」
初のタッグ王座挑戦は、桜井の敗北に終わった。コグマにリベンジを許した形だ。ただ桜井が予想以上の粘りを見せた試合でもあった。ジュリアは敗因を、自分が葉月との場外乱闘に夢中になってしまったからだとコメントしている。タッグとしての力を発揮しきれなかったということだ。だからこそ「この経験を次に活かせばいい」とも言っていた。
桜井にとっては、タッグパートナーの力を感じる試合だった。
「攻め込まれたり疲れてきた時に鼓舞してくれて、1人じゃないという感覚になりました。だから余計に負けたくないと思って。結果として負けましたけど、2人でタッグベルトを獲りたいという気持ちがもっと強くなりました。スターダムに出始めた頃に(ジュリアに)ボコボコにされて試合の前半で心を折られて。でも、その相手とタッグを組んでベルトを狙うところまで来た。何か縁があるし絆があるんだと思います。このタッグで強くなりたい。アリカバを超えたいです」
この春に解散したアリカバ(アルト・リヴェッロ・カバリワン)はジュリアと朱里のタッグ。ベルトも巻いていた。シングルでもトップの2人が組むことで相乗効果が生まれる名コンビだった。タッグ王座挑戦は、桜井にアリカバを超えたいというくらいの欲と自信をもたらしたわけだ。