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格闘技PRESSBACK NUMBER
天心vs武尊級の頂上決戦へ…“真面目な不良”だった海人はなぜシュートボクサーの道を選んだのか?「僕がこの競技を世に広める」
posted2022/06/18 17:02
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao / SHOOT BOXING
一見すると、韓流スターと見紛うようなルックス。実力の方も申し分なく、現在は怒濤の11連勝中だ。負かした相手の中には日菜太や緑川創など、国内のトップファイターも含まれる。RIZINやRISEのビッグマッチからも声がかかり、いずれも勝利を収めている。今年4月には「レベルの差を見せつける」という公約通り、MMAにも活路を見出す“ブラックパンサー”ベイノアを1Rわずか41秒、左フック一発で葬った。
『THE MATCH 2022』で、K-1の野杁正明と「もうひとつの世紀の対決」を行なうシュートボクシングの海人は、70kg級では間違いなく世界のトップコンテンダーだ。新型コロナウイルスの感染拡大によってキックボクシング界の流れが停滞していなければ、もっと早く世界に羽ばたいていただろう。
海人がトラッシュトークに背を向ける理由
こんなに強く華もあるのに、なぜか海人には地味な印象もまとわりつく。矛盾しているようだが、これが現実なのだ。今までこんなファイターは見たことがない。筆者は頭をひねり、ひとつの仮説を立てた。テクニックのレベルが高く、試合が洗練されすぎているからではないか。試合中、まったくといっていいほど喜怒哀楽を表に出さないことも「わかりにくさ」に拍車をかけているのかもしれない。
さらに、もうひとつ大きな理由がある。海人は格闘技界で大流行中のトラッシュトークに背を向ける。試合前に相手の人格まで完全否定するように罵ったり、胸ぐらを掴んだりするような行為は間違ってもしない。
海人は「いまの格闘技は、闘うだけじゃダメじゃないですか」と嘆く。
「SNSを駆使して自ら発信していかなければならない流れになっているけど、自分としては、闘ってこそ格闘家だと思うんですよね」
見た目とは裏腹に、海人は頑固な男でもある。その徹底ぶりはちょっとやそっとのレベルではない。まるで劇画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬の父・星一徹のようだ。