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[ダブルインタビュー]バトラー&フルトン「戦う準備はできている」
posted2022/06/18 07:06
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
3つのベルトを束ねたモンスターが次に目指す頂はどこにあるのか。4団体残り一つのベルトを持つ苦労人、1階級上で統一を進める無敗の強豪。次戦以降の対戦が有力視される2人の対照的な王者が井上について語った。
ほんの数カ月前まで、英国の地味なベテラン、ポール・バトラーが井上尚弥の“バンタム級最後の標的”になるなど誰も夢にも思わなかっただろう。しかし、ここにきてそんなシナリオが現実味を帯びている。
6月7日、ノニト・ドネア(フィリピン)を返り討ちにした井上は目標とする4団体統一まであと一歩に迫った。WBOタイトルを持つのは、しばらくライバルの1人として脚光を浴びてきたジョンリエル・カシメロ(フィリピン)ではなく、33歳の素朴な技巧派ボクサーだ。
「同じ階級ではありますが、私は井上の大ファンでもあります。テレンス・クロフォード(米国)、オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)、そして井上がパウンド・フォー・パウンドのトップ3というのが私の意見。そんな井上と戦えることになったら素晴らしい名誉です」
目を輝かせてそう語るバトラーはイギリスのチェスター出身で、34勝(15KO)2敗という少々地味な戦績が示す通り、近年ボクシングが大人気の英国でもエリート扱いされてきた選手ではない。2014年6月、スチュワート・ホールとの英国人対決で微妙な2-1の判定勝ちを収め、16戦無敗のままIBF世界バンタム級王者になったまでは良かった。しかし「適正階級のスーパーフライ級で戦いたい」という理由で防衛戦をしないまま王座を返上すると、以降は思った通りに物事が進まなかった。