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「藤井聡太叡王とペコちゃん」はカワイイけど… 渡辺明名人3連覇、森内九段らの“二刀流”もスゴい《観る将マンガ家が描く5月の将棋ハイライト》
posted2022/06/01 11:05
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph by
Junsei Chida
名人戦や叡王戦など、タイトル戦が決着を見た5月の将棋界。手に汗握る公式戦からエンターテインメント性あふれる出来事まで……今月もイラストで振り返っていきたいと思います!
1)渡辺名人の3連覇と、谷川九段の永世名人襲位
4月6日に開幕した第80期名人戦は第1、第2局と渡辺明名人の連勝で始まり、勝負の5月戦線を迎えました。福岡県福岡市で開催された第3局は角換わりで進む中で、後手の斎藤慎太郎八段が134手で勝利。1勝を返す形になりました。
終盤に逆転劇が起きたゆえ、その後の対局にも何らかの影響が及ぶのか……観る将視点ではその辺りが気になっていたのですが、ここから強さを見せるのが、渡辺明名人でした。
山口県山口市で行なわれた第4局では「おそらく斎藤八段の研究手」と棋士の方々が解説していた「▲8八角」から「▲3五歩」の攻めに、渡辺名人が「△同歩」としたのが驚きの展開になったらしく……名人戦でもアグレッシブな戦いを見せる2人に頭が下がる思いでした。
この熱戦を100手で制したのは渡辺名人。防衛へあと1勝として迎えた28・29日の第5局。岡山県倉敷市(将棋のまちを打ち出しているそうなので行ってみたいです)が決戦の場となった中で……おふたりの入場は、なんと人力車。倉敷の美観地区と和服姿のマッチングは映えるし、イラストにもってこいでした(笑)。
迎えた対局は渡辺名人が97手で勝利。3連覇を達成。第十五代名人としての貫禄と棋力を見せつける形となりました。様々なメディアの記事に目を通すと、棋王戦で激突した永瀬拓矢王座も〈渡辺名人の序盤の深さ〉に舌を巻いたそうです。これぞ棋界のトップオブトップ……とまた渡辺名人への畏敬の念が強まります。
谷川九段の永世名人に感じた偉大さ
そんな名人戦にまつわるトピックで、第5局を前に発表されたのは「谷川浩司九段の永世名人(十七世名人)」の襲位でした。「あれ、永世名人って原則引退後じゃなかったっけ」という知識でしたが、60歳を迎えたタイミングで、これまでの貢献度を踏まえて決まったそうです。
日本将棋連盟ホームページのコメントの一部には、このように記されていました。
〈高度な序盤戦術と、難解な中終盤戦。歴史的な変革期にある将棋界で、私自身もその進化に寄与できるよう、そして、若手棋士との盤上での対話を楽しめるよう、これからも精進を重ねてゆく所存です。今後とも、どうぞよろしくお願い致します〉
現役棋士として、気力十分な姿勢……立場は全く違えど見習いたいものです。