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「またお前か、ってため息が出る」鳥かごが“一番下手”なのに不動のレギュラー!? J1広島スピードスターMF藤井智也の“長所を伸ばす力”
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/06/01 11:00
広島の右サイドで躍動するMF藤井智也（23歳）。50m5秒台の俊足を生かしたドリブルが武器
岐阜県で生まれ育った藤井は、中学時代は若鮎長良FCに所属した。だが、なかなか出場機会は訪れず、定位置はベンチ。最後の大会はベンチの外で戦況を見つめたまま終えたという。
「当時のレギュラーの多くが県内の強豪校に進みました。彼らと一緒の高校に進んだらまた同じ状況になり、劣等感を抱え続けたままサッカーをすることが目に見えていた。（正直に言えば）その環境から離れたかったので、レギュラーの選手たちを見返すチャンスがある高校を選びました」
藤井は地元の進学校の1つ、岐阜県立長良高校に進学。県予選でベスト8には手が届くものの、全国レベルからは程遠いサッカー部だった。テスト期間の部活動は禁止。高3のインターハイ予選（6月）を最後に3年生の全員が引退し、練習グラウンドも野球部と陸上部の間で練習をする環境。そんな中でも藤井は全力で練習に取り組み、朝晩の自主トレは欠かさなかった。
「ひたすら1対1をしていました」
「自分にはスピードという武器しかなかったので、ひたすら1対1をしていました。僕の思いを汲んでくれた仲間数人と、15本連続で1対1に勝たないと終わらないシステムを自分で勝手に作って練習していましたね。予想以上にキツいんですけど、相手を抜く形をひたすらイメージしながら。
どんなにトラップがヘタクソでも、スピードに乗れる体の使い方、体の向きをつくっちゃえば、いけちゃいます。将来的にうまい選手たちと対等に戦うために徹底的に長所を伸ばすことを意識しました」
高校3年間の成績はインターハイ予選、選手権予選とすべて準々決勝止まり。数少ない同志は最後の選手権予選まで戦ってくれたが、ベスト8の壁を破ることはできず、藤井にとっては中学時代の仲間たちを見返すことはできなかった。
しかし、彼がこの3年間で得たものは、後のサッカー人生に大きく活かされることになる。
