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「井上尚弥1位」の可能性は? カネロ衝撃の敗戦で米リング誌のP4Pでも激しい議論が…“ドネア戦の完勝”の他に必要な要素とは
posted2022/05/23 11:02
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
JIJI PRESS
“現役最強”と目された王者が陥落――。
5月7日、ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われたWBA世界ライトヘビー級タイトル戦で、4階級制覇王者サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)が王者ドミトリー・ビボル(ロシア)に3-0(115-113x3)の判定負けを喫した。様々な意味でボクシング界の顔であり続けてきた選手が2013年以来の黒星を喫し、その衝撃は依然として業界に渦巻いている。
「言い訳をするつもりはないが、私が勝ったと思った。4、5ラウンドくらいは取られたかもしれないが、最大でそれくらいだろう」
試合直後、リング上では一度は負けを認めるような発言を残したカネロだったが、その後の会見では傍若無人なまでの強気な態度を取り戻していた。とはいえ、この前言撤回はおそらく周囲の助言を受けた上でのものであり、商品価値を可能な限り保つためのプロイだろう。実際にはリングで述べた「彼は素晴らしいボクサーだった」という言葉の方が本音に近かったのではないか。
カネロと互角以上にわたり合ったビボル
前評判では不利とされたビボルだったが、蓋を開けてみれば鋭いジャブを丁寧に使って見事なアウトボクシングを進めた。スキルでカネロと互角以上にわたり合い、ロープに詰められても冷静に対処。特に相手が飛び込んでくる際に叩き込む左フックが有効な武器になり、カネロに疲れが見えた終盤は接近戦でも打ち勝っての完勝だった。
守備のいいカネロも致命打は避けたものの、リングサイドでこの試合を見たメディア、関係者の大半は9-3、10-2といった大差でビボルの勝利と見ていた。2019年11月、すでにライトヘビー級のタイトルを取った実績もあるカネロだが、やはり現在の適正階級は4団体王座を保持するスーパーミドル級なのだろう。自身とほぼ同等の技術を持ち、サイズ、リーチでも上回るロシア人に今回ばかりは力負けした印象だった。