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スターダム新勢力God's Eye、無敗の原動力とは? 下剋上でトーナメント優勝のMIRAIに朱里が語った期待「少しの変化で大きく伸びる」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2022/05/10 17:01

スターダム新勢力God's Eye、無敗の原動力とは? 下剋上でトーナメント優勝のMIRAIに朱里が語った期待「少しの変化で大きく伸びる」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

4度目の王座防衛を果たした朱里と、シンデレラ・トーナメント優勝のMIRAI。God's Eyeの快進撃が続いている

自分より重いひめかを担ぎ上げて決めた“朱世界”

 サイズとパワーにスケールの大きさもついてきた感のあるひめかの闘いぶりに苦しみながら、朱里は喜んでもいたのではないか。チャンピオンとしての彼女のモットーの一つは「相手に限界を超えさせて、その上で勝つ」こと。立ち技格闘技Krush、総合格闘技パンクラスでチャンピオンになった朱里は、だからこそプロレスならではの魅力も常に意識している。技を受け、時に相手の力を引き出して観客を魅了するのがプロレスだ。決して独りよがりにはならない。

 ひめかはこの試合で、大きく株を上げたと言っていいだろう。それでも朱里は得意のキックで会場をどよめかせ、プロレスならではの複合関節技で痛めつけ、最後は自分より重いひめかを担ぎ上げて必殺技・朱世界を決めた。

MIRAIの優勝に朱里は「素直にメチャクチャ嬉しかった」

 MIRAIのトーナメント決勝はセミファイナル。入場ステージの裏で集中していた朱里は試合を見ることができなかった。ただ優勝したことは分かったからそれも力になった。「素直にメチャクチャ嬉しかったです」と朱里。

 3月の両国国技館、2日連続の防衛戦でも原動力になったのは「ユニットを作るのにベルトを失うわけにはいかない」という思いだったそうだ。メンバーが3人になり、チームとして勝つという意識はさらに強まった。気にするのは自分の勝ち負けだけではないのだ。

 朱里の期待をMIRAIも感じていた。朱里に教わってグラウンド、関節技が進歩したという。もともと柔道経験者。岩手県出身で、東京女子プロレスでデビューした時のキャッチフレーズは“東北ストロング魂”だ。デビュー戦には、プロレスを好きになるきっかけとなった初代タイガーマスクが激励に訪れた。男子のプロレスを見て育ち、プロレスの中でも“強さ”を追求するタイプ。東京女子時代は“格闘プロレス”UWFルールで試合をしたこともある。朱里との練習はMIRAIにうってつけだった。

MIRAIが見せた“4戦連続の下克上”

 5月3日でデビュー3周年。トーナメントの時点では新人王座であるフューチャー・オブ・スターダム挑戦権もあった。そんなMIRAIが、先輩たちを次々と下しての優勝だ。初戦は白川未奈、準々決勝は鹿島沙希に勝利。この大田区大会は1日2試合、準決勝でなつぽいからギブアップを奪い、決勝ではコグマから3カウント。どちらも元ハイスピード王者で、MIRAIにとっては4戦連続の“下克上”だった。

 といって、この優勝は“奇跡の大番狂わせ”というわけでもなかった。スターダムでは、他団体から移籍してくると“査定マッチ”を組まれる選手もいるのだが、MIRAIは今年1月のスターダム初戦から即戦力扱い。DDMを率いるジュリアが実力を認めた新鋭としての登場だった。

 1月29日の名古屋大会では朱里のベルトに挑戦。敗れはしたが予想以上の大健闘を見せた。3月の両国大会では前ワールド王者の林下とも対戦している。こちらも敗戦だったが、堂々と渡り合った。

【次ページ】 優勝したMIRAIに向けて朱里が語った思い

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