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スターダム新勢力God's Eye、無敗の原動力とは? 下剋上でトーナメント優勝のMIRAIに朱里が語った期待「少しの変化で大きく伸びる」
posted2022/05/10 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
女子プロレス界のトップを独走するスターダムだが、リングの上は“安定”と無縁だ。むしろ流れの速さ、移り変わる光景が団体の推力になっている。
「スターダムでは、全員がトップを狙っている」
そんな言葉を、何人もの選手から聞いた。激しいのは試合だけでなく自己主張、個性のアピールも。上位陣でさえ埋没しないようにと躍起になっている。ポジションが安泰の選手などいない。誰もが必死で、だからリング上の風景=勢力図も変わり続けるのだ。
実際、1年前と比べると全タイトルでチャンピオンが変わっている。恒例のシンデレラ・トーナメント、昨年優勝者(6月)の上谷沙弥は現在“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムの王者だ。
団体の頂点である“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムを保持するのは朱里。昨年末、林下詩美から奪取した。防衛を重ねる朱里は、この春に所属ユニットDonna Del Mondo(DDM)を離脱すると、スターダム新加入の壮麗亜美(元アクトレスガールズの三浦亜美)と新ユニットGod's Eyeを結成した。神の目に適った、選ばれし者たちという意味だ。2人の闘いを見て、MIRAIもGod's Eyeに加わった。
朱里vsひめかは“元同門”同士の重要な一戦に
4月29日に開催されたビッグマッチ、大田区総合体育館大会では、この3人が勢いを見せつけた。第0試合の3WAYバトルで壮麗が勝利すると、MIRAIはシンデレラ・トーナメント優勝。メインイベントでは朱里がひめかを下して4度目の防衛に成功した。
「今日はGod's Eyeの勢い、その風を届けることができたと思います」
試合後にそう語ったのは朱里。自身も会心の防衛だった。対戦したひめかはDDM所属だから元同門。単に対戦相手というだけでなく思い入れもある。ひめかとしては、朱里とMIRAIが抜けた“新生DDM”を、赤いベルトを巻くことで引っ張りたいという思いがあった。
身長172cm、元アイドルにして団体屈指のパワーファイターとして知られるひめか。2年前からスターダムに参戦し、タッグ王座、6人タッグ王座を獲得している。これまではユニットへの貢献を意識してきたが、プロレスラーである以上は個人として前に出ることも欠かせない。今回のタイトル挑戦はその第一歩だった。
「ベルトを狙うだけじゃなく、何かを残さないといけない」
そう決意して臨んだ赤いベルト初挑戦。ひめかは潜在能力をこれまでにないほど解放した。全日本プロレス時代の秋山準から教わったジャンピング・ニーアタックが真正面からヒット。最近はあまり見せなくなっていたが、この大一番で“解禁”した。さらにコーナーからダイビング式のヒザも。場外へのダイブまで見せた。