「でも、大丈夫です」1レース3回転倒の破天荒な16歳・古里太陽の期待値が、それでも爆上がりの理由とは？《日本人ライダーの注目株》

　昨年このコラムで『速いやつは最初から速い』というタイトルで紹介した古里太陽が、今季、一足跳びでホンダ・チーム・アジアからMoto3クラスに参戦している。グランプリライダーの育成シリーズのアジアタレントカップで史上初の7戦全勝という記録を樹立。ヨーロッパで開催されるルーキーズカップでも、シーズン途中に出場したイタリア大会でデビュー戦ウインを達成して話題を集めた鹿児島県鹿屋市出身の16歳のライダーである。

　その太陽が、デビュー3戦目となった第5戦ポルトガルGPで印象に残るレースをした。決勝に至る3日間はまさに“波乱の”と形容したくなる日々だった。簡単に振り返ると、こんな感じになる。

　初日のFP1で、太陽は日本勢トップの6番手。その後の決勝で3位となった佐々木歩夢よりひとつ上のポジションだった。歩夢が決勝に向けて別メニューで走行していたとしても、太陽にとっては初めて経験するサーキット、しかもウエットコンディションという厳しい条件の中で、6番手のタイムはなかなかであり、これは面白いことになったと思った。

1回も計測ラップを刻めず、最下位30番手グリッドが確定

　午後に行われたFP2もウエットとなり、果たしてどんな走りをするのだろうとわくわくしながら見ていたら、コースインして3周目、僕がいた4コーナーで転倒した。ピットに戻り、マシンの修復とチェックをして再度コースインしたが、雨足が強くなりFP1のベストタイムを更新することが出来ず、総合17位で初日を終えた。

　翌日、土曜日の午前中に行われたFP3も雨。このセッションは雨足が強く、初日のタイム更新は難しい状況だったが、その中で太陽は初めて走るサーキットでの経験値を上げるために積極的に周回を重ねる。しかし、1コーナーでハイサイドになり2度目の転倒を喫する。結局、フリー走行は総合17位に終わり、Q1からの予選となった。

　現在の予選方式は、3回目までのフリー走行で上位14人までが自動的にQ2に進み、15位以下の選手たちは最初に行われる予選Q1に出走、上位4人がQ2に進み、Q1の5番手以下（総合19位以下）は自動的にグリッドが決まる。

　そのQ1で4位以内を目指した太陽だが、なんと、コースインした2周目の2コーナーで今大会3度目の転倒を喫する。わずか15分間のセッションだったこともあり再スタートできなかった太陽は、1回も計測ラップを刻めず、最下位30番手グリッドが確定した。

　一体全体、太陽は何をやっているんだと思う人は多かったと思うが、僕は「実に太陽らしい」2日間になったと思った。

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