ボクシングPRESSBACK NUMBER
竹原慎二「お前、今日負けたら引退だからな」元佐川急便・藤岡奈穂子46歳が“北新宿の四畳半”から女子ボクシングの第一人者になるまで
posted2022/04/08 11:00
text by
たかはし藍Ai Takahashi
photograph by
Getty Images
「実は一度、オファーを断りました。ファイトマネーなどの条件が世界王者として見合わなかったからです」
日本人初のボクシング世界5階級制覇王者、藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則ボクサ・フィットネス・ジム)は、4月9日(日本時間10日)に米国テキサス州アラモドームで、ロンドン五輪銅メダリスト、WBC女子フライ級王者マーレン・エスパーザ(アメリカ)と、王座統一戦の大一番に臨む。
46歳を迎え、年齢だけをみれば衰えを心配されるが、業界内外からの評価が下がることはない。事実、2021年度の表彰選手として、プロボクシング女子年間最優秀選手賞と、同年間最高試合賞をダブル受賞した。活躍の舞台をボクシングの本場・アメリカに移した藤岡は「日本の女子ボクシング選手にもチャンスは来ている」と語り、現地の女子ボクシング市場を自らの拳で切り拓く意気込みを示している。
昨年7月、米大手プロモーターであるゴールデンボーイ・プロモーションズ主催の試合で、藤岡は日本人女子選手の世界チャンピオンとして、アメリカの地で初めての勝利を挙げた。その後、秋口に試合のオファーが舞い込んだが、冒頭で明かしたように試合を白紙にした。そして再交渉の末、今回の試合が実現することになった。
「一度目のオファーは条件もファイトマネーも、相手側(プロモーター)の言いなりだったので。チャンピオンである以上、ファイトマネーの金額は評価以外の何ものでもない。再度提示された金額で『それなら、やるか』と引き受けました」
断ることで今後のオファーがなくなる懸念もあった。しかし、それよりも優先したのは、世界チャンピオンとしての誇りだ。金額は開示できないものの、「日本で試合をしている限り、提示されることはないレベル」だという。
「今はファイトマネーのゼロがひとつ違う」
一般的にボクシングのファイトマネーは、チャンピオンと挑戦者で金額が大きく異なる。
藤岡も過去に挑戦者として海外で試合をしたことがあった。ファイトマネーに関しては、リスクに見合ったものではなかったという。それでも挑戦したのは、リスクをとって戦うだけの価値があったからだ。しかし、それは挑戦者としての話にすぎない。今回は世界チャンピオンとして敵地に乗り込むのだ。