濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大物だけど“ド天然”…KAIRIはスターダム復帰リングでいかに観客を熱狂させたか?「ほーちゃんはスーパースターになっても変わらない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/04/08 11:01
スターダムの両国2連戦でスターライト・キッドらを相手に、抜群の存在感を放ったKAIRI
「痛みが嬉しいね」
自分もこのレベルまで行ける。行かなくてはいけない。そんな手応えがキッドにはあったのだろう。おそらくKAIRIの目的もそこにあった。単に古巣で自分が輝くだけではない。実力、経験、これまで得てきたすべてを“今のスターダム”に伝えたい。
生え抜きとしてスターダムを守り続ける選手、野心を抱いて外から来た選手、それになかなか結果が出ない選手。みんなの気持ちが分かるとKAIRI。この両国2連戦でも“岩谷と組むKAIRI”、“たむ、ウナギと闘うKAIRI”、“キッドと闘うKAIRI”それぞれに違うタイプの魅力があった。
「痛みが嬉しいね。プロレスしてる実感って痛みを感じる時、その痛みに立ち向かう時だと思うので。今日はちょっと課題が見つかったけど、あらためてプロレスって楽しい。何年経っても、もっともっと上を目指していきたい」
“相変わらず天然なほーちゃん”
歴戦の兵らしいコメントを残したのは2日目を終えて。ただこの2日とも、リングを降りて退場する方向を間違えて観客の顔をほころばせたことも記憶に残る。華やかなオーラで圧倒するだけではないのだ。初日のマイク、その第一声は「超気持ちいい! なんも言えねえ!」だった。
なぜ今ここで北島康介なのか。まったく分からないけれど、はっきりしているのはKAIRIの個性の一つが“ド天然”だということだ。熱い攻防、見事な技に息を呑みながら、親しみやすさも同居しているのがKAIRI。天然ぶりでは負けていない岩谷は言った。
「なんか楽しかった。自分たちはどこか抜けてるところがあって。息が合ってるのか合ってないのか。ほーちゃん(KAIRIのあだ名)はそういうところがスーパースターになっても変わらない、いいところ。自分たちが組んだら超天才ではなく、どこか愛嬌のある面白いタッグになるのかなって」
アメリカ帰りの大物、復帰戦に向け新技を習得する真摯さ、試合ぶりの華やかさと巧みさ、とてつもない存在感。なおかつ“相変わらず天然なほーちゃん”でもあって、KAIRIはその多様な魅力を2日間かけて見せてくれた。
「もっともっと強くなって帰ってきます」
次の試合がいつになるかはまだ決まっていないが、今のKAIRIなら誰と組んでも、誰と闘っても刺激的だ。“大物レスラーのゲスト参戦”というレベルでは終わらないからこそ、KAIRIは真の大物なのである。
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