濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大物だけど“ド天然”…KAIRIはスターダム復帰リングでいかに観客を熱狂させたか?「ほーちゃんはスーパースターになっても変わらない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/04/08 11:01
スターダムの両国2連戦でスターライト・キッドらを相手に、抜群の存在感を放ったKAIRI
ももクロから教わった“コミュニケーション術”
たむとは気持ちのこもったエルボーの打ち合い。何かあらゆる場面が“絵になる”という感じだ。最大の見せ場はフィニッシュの連続攻撃。まずはKAIRIが世界を魅了したインセイン・エルボー(ダイビングエルボードロップ)をウナギに決め、続けざまに岩谷がムーンサルト・プレスで3カウントを奪った。
KAIRIは約5年ぶりのスターダムでの試合で、宝城カイリとカイリ・セインを経た上での“KAIRIとしての闘い”を見せた。印象的だったのは、試合後のマイクアピールで「リングからなるべく多くのみんなと目を合わせようと見ているつもりです」と語ったこと。実は以前からやっていることで、後楽園ホールでのタイトルマッチの後などは全員と目を合わせるという意識だった。
それもファンとのコミュニケーション、気持ちを伝える手段。ももいろクローバーZとコラボレーションした際に教わったという。中井祐樹からももクロまで。これまでのあらゆる経験が、今のKAIRIを形作っている。
キッド戦は見事な「ヒール対ベビーフェイス」に
27日、両国大会2日目はスターライト・キッドとのシングルマッチ。前日とは様相の違う試合だ。たむとウナギは他団体でデビューし、スターダムに移ってきた。キッドは団体生え抜き。昨年夏、闇堕ち=ヒール化して大成長を遂げた。“世界のKAIRI”を食う気満々、存在感でも張り合っていった。
ラ・ケブラーダなど大技で観客の目を奪いながら、アームブリーカーに腕ひしぎ十字固めと腕への集中攻撃も。攻めるキッド、耐えながら反撃するKAIRIという構図は「ヒール対ベビーフェイス」のそれであり、お互いの個性を際立たせる内容だった。キッドがギリギリまで追い込んで、しかし最後はKAIRIが逆転。この日も完璧なフォームでインセイン・エルボーを見舞った。
インタビュースペースでのKAIRIは腕を押さえたまま。それだけダメージがあった。鼓膜も破れたという。
「もう一回。完全決着つけたい」
この試合が完勝だったとは思っていないようだった。キッドは試合後、KAIRIについて「最初から最後まで女優だな」と語った。“見せる”意識の高さを感じたのだろう。もちろん“見せる”のはレスラーなら誰もが意識していることなのだが、それでもKAIRIが飛び抜けていたということか。さらにキッドは言う。
「KAIRIは白いベルトの象徴。赤いベルトも巻いている。私はKAIRI以上の白いベルトの象徴になってやるよ。赤も同時に狙ったっていい。世界のKAIRIと闘って確信が持てたよ。世界にも興味を湧かせてくれたし、いよいよでっかい夢を掴んだ気がする。KAIRI、お前とは何度でもやりたい」