濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大物だけど“ド天然”…KAIRIはスターダム復帰リングでいかに観客を熱狂させたか?「ほーちゃんはスーパースターになっても変わらない」
posted2022/04/08 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
一言でいえば“千両役者”だった。
3月26日、27日のスターダム両国国技館2連戦。タイトルマッチに負けない盛り上がりとなったのがKAIRIの試合だ。
2012年に「宝城カイリ」のリングネームでデビューした、スターダム3期生。同期で1人だけプロテストが追試になるなど“落ちこぼれ”だったが、選手としての自覚が強まると結果も出た。“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダム、“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムの2大王座を獲得。
ひたむきな姿はファンだけでなく、周囲のレスラーの心も掴んだ。現在のスターダムの主力選手であるなつぽいは、新人時代にカイリの闘いを見て白いベルトを目標とするようになったそうだ。
2017年からは世界最大の団体WWEでカイリ・セインとして活躍。単身アメリカに渡り、環境の違いに苦しみながら世界中にその名を知られることとなった。各国から集まった多種多様な選手たちとの試合経験は大きな財産だ。レッスルマニアをはじめ、数々の大舞台を体験してもいる。
復帰初戦で見えた“経験値の違い”
コロナ禍もあり日本に帰国、WWEとの契約を終えると両国2連戦での古巣復帰を決めた。初日は苦楽をともにした1期生・岩谷麻優と組んで中野たむ&ウナギ・サヤカと対戦した。KAIRIがWWE入りする前のスターダムにはいなかった2人だ。
入場ゲートからリングに向かい、コーナーに登って客席を見渡す。その姿の“メジャー感”がまず凄まじかった。両国国技館という会場のスケールを個人が上回っているような気すらした。
そんなKAIRIに臆せず突っかかったのがウナギ。今のスターダムを盛り上げているレスラーとして、KAIRIを「査定してやる」と意気込んでいた。対峙すると手を真上に掲げる。受けて立ってやるから組んでこいというわけだ。形としても、文字通り「上から」。
ここでKAIRIはスライディングしての足払い。倒れたウナギを見下ろしてみせる。機転のきいた意趣返しだ。この辺りはやはり、経験値の違いだろう。
といって“アメリカ帰りの実力”を誇示するだけで終わるつもりもなかった。試合に向けてブラジリアン柔術の中井祐樹から足関節技を習い「クラーケンロック」と命名。キックボクシングの前田憲作からはスピニング・バックフィスト「カットラス」を伝授された。要所で決まった2つの新技からも、スターダム復帰への並々ならぬ意欲が感じられた。“貯金”でやっていくつもりではないのだ。