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《単独インタビュー》村田諒太36歳が明かした、ゴロフキン戦直前の“意外な本音”「情けない自分も見えてくる。ただ面白い」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKentaro Miyazaki
posted2022/04/08 11:02
4月9日、ついにゴロフキンとの決戦を迎える村田諒太が現在の心境を明かした
「ファイトプランは明かしません」だけど…
新たな日程が決まったのは延期発表からちょうど3カ月後のこと。WBAスーパー王座、そしてゴロフキンの持つIBF王座を懸けたミドル級王座統一戦は4月9日、場所はさいたまスーパーアリーナに決まった。日本においてはアマゾンジャパンのプライムビデオで独占配信されることになる。
ゴロフキン相手にどのように戦うかは、前回のインタビューと同様に「ファイトプランは明かしません」と口を閉ざした。ただ、前回にはなかった一言を付け加えた。「一つだけ言えるとしたら、そのファイトプランがよりハッキリしたということです」
確かな分析力は、誰もが知るところ。延期期間を使って、ゴロフキンの映像を見まくったことは容易に想像できる。
正式発表後、メキシコ人ボクサーとのスパーリングもラウンド数を増やしていくことになった。順調に仕上げの作業に入っていることがうかがえる。
日本ボクシング界史上最大の栄光へ
最近、心に留めている言葉がある。
百里を行く者は九十を半ばとす――。
中国の史書『戦国策』にある一節。待ちわびたメガマッチが間近に迫るなか、ここからがまさに正念場になる。
「僕の知るボクサーは“千里の道も九百九十九里をもって道半ばとす”と言っていました。同じ心境ですね。九百九十九里で頓挫したら、今までの苦労が一体何だったんだってなってしまいますからね」
試合から遠ざかり、ゴロフキンとのメガマッチが決まりかけては消え、決まったら今度は延期……。その道のりは本人からしてみれば「百里」では足りず、「千里」の感覚なのかもしれない。「千里」の先が見えてホッとしてしまうことが何よりの大敵であることも理解している。
試合までの経緯もさることながら、リングに上がってからも勝利をつかみ取るまでには険しい「千里」のステップが待っている。言うまでもなくゴロフキンは元3団体統一王者であり、通算21度の防衛数もミドル級歴代最多。試合日までに40歳を迎えるものの、トップ・オブ・トップの輝きは色褪せていない。リングに上がる前も、上がってからも結局はつながっている。
今まで味わったことのない苦しくて長い一里を、道半ばとして。難儀を乗り越えたその先に、日本ボクシング界史上最大の栄光がきっと待っている。運が良かったと、心から笑える日を信じて――。