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母国で牧場経営していた40歳トンプソン ルークはなぜ再び日本でラグビーを?「もう一度プレーしませんか?」GMが明かす交渉の裏側
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byShiningarcs
posted2022/03/02 11:00
日本に帰ってきたLOトンプソンルーク。経験豊富な“トモさん”の加入はチームに刺激を与えている
リーグワン初出場は22年2月26日だが、来日後の初試合は違う。2月6日の練習試合だ。相手は埼玉ワイルドナイツの控え組で、トンプソンは先発ロックとして前半40分間出場した。
その前半終了間際だった。40分間近く走っていたトンプソンが、なんとラックで相手から攻撃権を奪う守備プレー「ジャッカル」を決めたのだ。
トンプソンは「(ジャッカルは)ビックリした(笑)」と自分自身に驚いていた。
「コンタクトは久しぶりだからちょっと心配ですが、テクニックは大丈夫。ゲームフィットネスがないとリアクションが遅いけど、練習でレベルアップしていきます」
トンプソン加入のメリット
選手として通用することを証明したトンプソンだが、好影響はオン・ザ・ピッチに留まらない。シャイニングアークスにとっては渡りに舟のような人材だった。
「トモさんの強みは若手の育成力。ウチは若い外国人選手やロックが多い。(ジェームス・)ムーアとも話しましたが、トモさんが『自分のキャリアを後押ししてくれた』と話していました」(内山GM)
今季からシャイニングアークスに新加入した28歳のロック、日本代表ジェームス・ムーアは19年W杯でトンプソンとロックコンビを組んだ間柄。チームにはムーアを含めて8人のロックがおり、彼らの育成係としての役割も期待されているというわけだ。
刺激を受けるのはロックや若手外国人選手ばかりでないだろう。バックスのスタンドオフとして21年日本代表候補になった25歳の前田土芽は、チーム内におけるトンプソンの態度に感銘を受けている。
「トモさんは学ぶ姿勢がすごい。練習中から分からないことがあるとすぐに聞いてきます。僕たちがチームのことを教える前に『教えてほしい』と言ってくれます。もちろんいろんな経験をチームに持ってきてくれているので、(自分たちも)吸収することがたくさんあります」
40歳がオン・ザ・ピッチで粉骨砕身すれば、チームのエナジーは確実にアップする。「40歳が走っているのに25歳が走らないわけにはいきません」と前田は笑う。