ラグビーPRESSBACK NUMBER
母国で牧場経営していた40歳トンプソン ルークはなぜ再び日本でラグビーを?「もう一度プレーしませんか?」GMが明かす交渉の裏側
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byShiningarcs
posted2022/03/02 11:00
日本に帰ってきたLOトンプソンルーク。経験豊富な“トモさん”の加入はチームに刺激を与えている
「昨年の夏頃、ロックの選手が一人移籍したのでリサーチをしていたら『トモさんがコンディションが良いらしい』という話を聞いたんです。ニュージーランドのクラブレベルでプレーしていたようなんですが、彼のような選手はコンディションさえ良ければある程度計算ができます。そこで一気にドライブをかけて、すぐ電話をして『もう一度プレーしませんか?』と訊きました」(内山GM)
“彼のような選手”。それはつまり、チーム最年長の38歳で参加した19年W杯日本大会で4試合に出場し、驚異のタックル成功率96%を記録できる選手。「静岡の衝撃」アイルランド戦では63分間の出場で、フル出場でも驚異的な19タックルをノーミスで決めるという離れ業をやってのけ、日本代表初のW杯8強に尽力した鉄人だ。
「でも一度は断られました」と内山GMは振り返る。
「牧場経営をうまく引き継げないという理由でした。『すごく良い機会をくれてありがとう』と言われて断念したんですが、1カ月後くらいに『事業を引き継げる人が見つかった』と連絡がありました。もちろん答えはイエスでした」
コロナ禍での牧場経営「まだ厳しい」
トンプソンが牧場経営を始めた20年、新型コロナウイルスの世界的流行が始まった。昨年11月の入団会見でトンプソン自身が「いまニュージーランドの牧場はまだ難しい」と吐露していた通り、牧場の経営難も要因だったろう。しかし鉄人ロックの再来日は、日本ラグビーにとっては不幸中の幸いだった。かくしてトンプソンは「実家のような場所」と表現する東大阪ではなく、「めっちゃキレイな場所」という浦安で再スタートを切った。
来日後のパフォーマンスは、ある程度計算できる。そう考えていた内山GMの予想は的中した。