マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

「親がお金、お金っていうから…」「上下関係がコワい」最近の中学野球選手の“悩み”…甲子園に行けるか、だけじゃない“高校を選ぶ条件” 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2022/02/26 17:01

「親がお金、お金っていうから…」「上下関係がコワい」最近の中学野球選手の“悩み”…甲子園に行けるか、だけじゃない“高校を選ぶ条件”<Number Web> photograph by Getty Images

先日、中学野球の現場で球児から「どこの高校に行けばいいですか?」と質問された筆者。指導者や先生たちにも話を聞いていくと最近の中学球児が抱える“悩み”がみえてきた(写真はイメージです)

「この前、ある生徒が、『自分、特待生でどっかの野球部行けませんか?』っていうんです。お前の成績なら心配ないだろって言ったら、『成績じゃなくて、学費免除のほうなんで……』。お金なんですよ。ひとり親の家庭が増えて、高校から急に学費がかかるのを、親御さんがすごく心配している。『言われたのか?』って訊いたら、『言われてないけど、何かにつけて、親がお金、お金っていうから』。ほかの学校の先生たちからも聞こえてくるんですけど、結局、費用の免除っていうのは、よっぽどずば抜けた選手だけのことなので、なかなかかなえてあげられなくてね」

 2年前に卒業して高校野球に進んだ生徒の母親は、昼間の仕事のあとに、もう1つ仕事を増やして頑張っていたが、過労がもとで腎臓を病み、入退院を繰り返している。そんな例があるという。

 野球は、どうしても用具にお金がかかる。グローブやミットなど、硬式用だと4万も5万もする。

「ついこのあいだですよ……高校で大ケガをしたり、大病した時の補償とか訴訟って、どうなってるんでしょうか?って、親から訊かれて、私もびっくりしましたね。進路相談で、そこまで訊かれるのか。そういう時代になったのかって」

 どんな答えを返したのか、気になった。

「それは、志望する高校にご自身で訊いてみてください……ケガや病気は、学校のせいばかりじゃありませんよ、ってね。まあ、後ろ半分は、余計なことだったかもしれませんが」

 スポーツとケガ、故障は隣り合わせ。

 虫歯になるのがいやだったら、最初から甘いものなんか食わなきゃいいってことですよ……以前、吐き捨てるようにそう言いきった監督さんもいた。

 野球に打ち込みながら、納得のいく高校生活を送るために、進学先を選ぶ。

 移ろいゆく人の感性と価値観によって、進学先を測る「ものさし」も多様化していく。

 ただ、それぞれの事情とあこがれによって候補がいくつかに絞れたとき、せめて、学校と野球部の実際のところを、選手と家族が「その目」で確かめた上で「ここで、ぜひ!」とうなずき合って受験先を最終選考されんことを、心より願ってやまない。

<高校野球スカウト編から続く>

#1から読む
「最近の子は、ほんとにすぐ野球部をやめる」高校野球界でタブー視されてきた“スカウト”が中学野球の現場に…どんな仕事をしている?

関連記事

BACK 1 2 3

高校野球の前後の記事

ページトップ